極限状態のドラマ
「クライマーズ・ハイ」=登山時に興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態。
1985年に群馬県御巣鷹山で起きた日航機墜落事故を題材とした、横山秀夫の社会派サスペンスの映画化、「クライマーズ・ハイ」。
昨夜マスコミ試写で見てきました。
横山秀夫と言えば、「半後ち」や「出口のない海」などベストセラー作家として有名ですが、この「クライマーズ・ハイ」、彼自身が地元群馬の地方紙の社会部記者として日航機墜落事故に遭遇、その取材の実体験に基づき世に放った衝撃作。
今なおベストセラーとして人気を博す原作が、映画化されたのです。
今回の試写はいつもと違い、作品の特徴から新聞社の皆さんが多数来場。
僕も同じマスコミに携わる人間として、不思議な緊張感の中、映画は始まりました。
“分厚い”映画でした。
単独事故としては、世界最大の航空機事故。
そしてそれを“地元メディア”という使命感から追いかける新聞社の記者たち。
一大ニュースを扱う興奮と、“命”そのものをニュースとして扱う“重さ”。
現場・社内は混乱し、主人公=悠木は極限状態の中、あるスクープをめぐって極限の決断を迫られる・・・
当時の緊張感が伝わる、というより、“当事者”のごとくスクリーンの中に引きずり込まれるほどの臨場感。
本当に分厚く、濃厚な映画でした。
職業柄、“メディアとは、報道とは何のためにあるのか?”と自問自答。
また、TVと新聞のメディア特性、メディア性質の違いを再認識しました。
ところで、私事ですが、実は、まさにこの123便に、この事故の数日前に乗ってるんですよ、僕。
夏休みの家族旅行で。
亡くなられた520名の方々にはそれぞれの“物語”があります。
劇中にもその“物語”がいくつか出てきます。
僕と同じ様に家族旅行であったり、出張であったり、甲子園への応援であったり・・・
520名分のそれぞれの“物語”は事故によって突然終わってしまい、別の“物語”が始まったはずです。
決して望んでいなかった、終わることの無い“物語”が。
ニュースでは伝えきれない“物語”。
主人公はその“物語”を紙面に載せるべく、様々な圧力と戦いながら極限状態に追い詰められていく。
いやしくも、メディアの一翼を担う人間として、決して忘れてはならない事を、再認識させられた映画でした。
「クライマーズ・ハイ」、極限の興奮状態を皆さんも体験してみてください!!
公開:7月5日