※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。
09-05-20-001repo.jpg

去年7月に運航を休止した名護市の民間ドクターヘリMESHが、きのう、運航を来月再開すると発表しました。再開を待ち望む北部の人々にとっては嬉しい話題ですが、MESHの目の前には、まだまだ大きな課題が横たわっていました。棚原さんのリポートです。

MESH運航再開会見「来月6月の15日に再びこの北部の空に救急ヘリを運航させたいとおもっております」

5月18日に開かれたMESHの運航再開を発表する記者会見。去年7月以来、実に11ヶ月ぶりにMESHが北部の空に帰ってきます。医師会病院の救急医療に携わる医師と看護師が中心となって結成した「NPO法人・MESHサポート」は、去年の運航休止以降、一人、年会費1000円のサポーター会員の呼びかけや、募金活動などを展開しました。

その支援の輪は北部だけにとどまらず、先月、糸満市の青年団などが主催するチャリティーコンサートも開催されました。

チャリティー実行委員長山城渉さん「北部の反対側で何とかそういった声をあげると、何か変わるんじゃないかと思ってやっております」

地道な呼びかけによって集まった資金は、約10ヶ月間で総額8000万円を超え、これにより、MESHの1年間の運航費、約1億円の目処がついたとして運航再開を決定したのです。

09-05-19-002repo.jpg

国頭消防・親川守洋消防長「大変期待しております」「助けられるのは時間の勝負ですからね」

この嬉しい知らせを最も喜んだのは全職員がMESHサポートの会員になっている地元、国頭地区消防本部。

国頭消防・親川守洋消防長「是非またMESHさんの運航を喜んでこちらもどんどん利用していきたいと思います」

運航再開に期待の声が高まる中、一番喜んでいるはずのMESHの代表、小濱医師の口からは厳しい言葉が飛び出します。

小濱正博医師「再開はめでたいよ。特に待っている人たちにとっては。でも俺らには厳しい状況しか待ってないから。でもまぁ今まで頑張ってきた皆に一応ね区切りとして“頑張ろう”というのはある(しかし)あんまりお祭り気分というのはないよ」

09-05-19-003repo.jpg

実は北部の空に再び飛び立つ、MESHの視界は、決して良好ではありません。そこには二つの大きな課題が横たわっています。

課題1「資金難」

MESH運航再開会見「この再開が我々の目的ではありません。今回再開いたしますが、じゃあその半年、1年後にですね永続した運航が可能なだけの資金が確保出来るかどうかはその保障がないというのが現実です」

集まった資金で、MESHが運航を再開出来る期間は10ヶ月から1年。財源の半分近くが、1000円サポーターや、募金によって賄われており財政基盤は不安定です。昨日夕方行われた、スタッフミーティングでも小濱医師は、前途厳しい船出を確認しました。

小濱医師「これから6ヶ月はこの再開が、再開して良かったではなくて、こっからもう始まりだから、今まで以上に会員の確保には奔走せないかんわけやからその辺は理解していて下さい」

MESHのスタッフは運航再開後も引き続き、街頭活動などで財源確保を続ける努力をしなければならないのです。

課題2「救命救急センター」

小濱正博医師「2機目のドクターヘリが入ること自体ハードルが高いしね」

今年、ドクターヘリ2機目の導入に新たな動きがありました。総務省令の改正です。県の公的ドクターヘリは、これまで1億7000万円の運航費を国と県で半分ずつ、約8500万円を負担して運用していましたが、総務省は今年3月、ドクターヘリの全国配備を促進させることを目的に県の負担をさらに軽減、現在の二分の一負担を四分の一負担にまで軽くしています。これにより、MESHに浮いた予算が回るのかというとそこには高いハードルが待っていました。それが「救命救急センター」です。

09-05-19-004repo.jpg

公的ドクターヘリの事業が委託されるために必要な条件は、ヘリを運営する病院が24時間体制で高度な救急医療を備える「救命救急センター」であること。しかし、北部地区医師会病院はセンター設置のために必要な人口が足りないのです。救命救急センターは県内に3箇所。すべて中南部に集中しています。センターは人口100万人に1箇所という設置条件があり、名護を含む北部は人口約13万人。

これにより、事実上、北部には救命救急センターが設置できず、よって公的なドクターヘリも設置できないのです。

小濱正博医師「ヘリを使って急患搬送の体制は整えた。じゃあその受け口であるこの北部の医療環境をどういう形で整えていくかということに真剣に取り組まないとですね」

課題を抱えながらも、患者の命を救うために、再び飛び立つMESH医師たちの闘いは続きます。

上江洲安勝・看護師長「多くの頂いたものがありますので、気持ちも資金も。それは無駄にせずに」「これはもう大きい感謝なんですけど、その感謝を医療に変えて真剣に取り組みます」

小濱正博医師「我々の使命はですね、決して最初の初回にね飛ばしたときと何も変わってない」

09-05-19-005repo.jpg

民間ドクターヘリの再開は嬉しいことですが、ヘリを飛ばしながら、命を救う活動とともに、存続の活動も平行してやらなければならいMESHのスタッフの負担の大きさを見捨ててはおけません。以上Qリポートでした。