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辺野古の新基地建設に向けた護岸工事が始まってきょうで1カ月。ご覧の映像は今朝の辺野古の様子です。事実上の埋め立て着手とされる護岸工事はきょうも淡々と進められ、海に深刻なダメージを与えかねない、荒っぽい作業も確認されました。工事に問題点はないのか、考えます。

久田記者「ちょうど1カ月、石を詰めた袋が5つだけ並べられていた浜は姿を変えています。護岸の基礎とみられる石材は、波打ち際からおよそ20m~30mほど、海へと伸びています」

Qプラスリポート 辺野古護岸工事 着工から1ヵ月

先月25日、石材を詰めた5つの袋を波打ち際に並べる儀式的な作業で始まった辺野古の護岸工事。

Qプラスリポート 辺野古護岸工事 着工から1ヵ月

4月25日・菅官房長官会見「埋め立て本体工事の開始は、多くの人々が望んできた普天間飛行場の全面返還を実現する確かな一歩だという風に思っております」

わずか1カ月で、現場では護岸が形を見せ始めていますが、作業を急ぐあまりなのか、荒っぽい作業もみられています。

久田記者「石材を詰めた袋を一度水面に浸し、そのあと反対側へと移す作業が先ほどから繰り返されています」

上空からは、事前に十分に洗い終わっているはずの石材から、濁りが発生している様子がはっきりと確認できます。

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これについて元土木技師で、新基地建設に反対する北上田毅さんは…。

北上田さん「海に投下する石材はアセスの評価書や埋め立て承認願書でも十分に洗浄をするとなっている。ダンプに石材を積んだまま、上からシャワーで水をかけて洗うんですけど、十分、採石場を出るときの洗浄がされていない、そういう疑いが強くある」

工事の不合理な点は他にもあります。

久田記者「2008年の時点では、この護岸の周辺は5%から25%程度がサンゴで覆われていたという調査結果があります。しかしこの分布域全体のサンゴが、移植の対象から外れてしまったというのです」

被度とは、サンゴが海底面を覆っている割合のこと。埋め立て区域内や周辺の小型サンゴは、総被度が5%以上の規模で分布していれば移植の対象となります。

ところが、国が2013年に改めて行った調査では、現在工事が進む護岸近くのサンゴの被度は5%未満とされ、移植が〝不要になった〟というのです。

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県側もこの調査結果を〝不自然〟だと疑問を示していますが、この海域のサンゴを確認できるのは現在のところ国側だけです。

本当にサンゴの群体がは急速にいなくなったのでしょうか。その検証すらできない中、護岸工事は進んでいます。

ここからは取材した久田記者に聞きます。海で、石をザブンと洗う光景がありましたね。

久田記者「率直に驚きました。実はこうやって石材を積み上げる前に、キャンプシュワブ内での石材の仮置き場ではこんな光景がありました」

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久田記者「作業員が石材に向かって放水し、石材を洗浄しているとみられます。このあと護岸へと運ぶ車に積んでいたのですが、これだけで済ませているとすれば、事前に示されている作業工程とは異なるものなんです。本来は、採石場から出荷する時点で洗浄し、仮置き場から出す際には処理プラントの水槽の中で洗浄するという2度の洗浄工程があります。元土木技師の北上田さんは『海水につけただけで白濁するということは、採石場から出荷される最初の時点での洗浄も不十分ではないか』と指摘しています」

1つひとつは小規模な濁りでも、今後工事が進むとすれば、埋め立てない範囲へも濁りが拡大して生物へ深刻な影響が出てしまいますから、こうした徹底した対策が必要ですよね。

久田記者「はい、ここで参考になるのは那覇空港の第2滑走路事業で取られた対策です。この時は外来生物対策の条例へ対応が必要だった事情もあって、国は環境対策を公表しました。『洗浄後の水が洗浄水、つまり元の水と同じ濁り具合になるまで洗浄する』とあります。つまり、濁りを完全に落としきることを明示しているんです。120秒以上かけるとか、600リットルから800リットルの水を使う、と具体的に示してもいます」

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そもそも埋め立ての是非をめぐって県民の多くは納得していないという根本の問題が残るなかで、国の都合で進められている工事。そのうえやり方もずさん、ではますます溝は深まりませんか。

久田記者「もし『どのみち埋め立ててしまうんだからどんなやり方でもいい』という考えが国側にあるとすれば、それは間違いだと指摘せざるを得ません」

久田記者「またサンゴの移植についても疑問が残ったままです。移植が必要なサンゴは小型サンゴの群体で7万4000を超えますが、移植のためであってもサンゴを取るには県知事の許可が必要ですので、移植作業はこれまで確認されていません。移植をきちんと行おうとすれば、工事への影響は避けられないはずですが、この時期や規模を県と協議しないまま工事を進めることは、埋め立て承認の条件に違反していると県は繰り返し国側に伝えています」

久田記者「ただ、着工から1か月たった今、県側が工事を止める具体的な手立てを打ち出せているかというと、ほとんど動きはありません。翁長知事は3月に『埋め立て承認の撤回を必ずやります』と明言しましたけども、このまま、何もかも国側のペースで工事が既成事実化されることは避けたいはずです。しかし、以前から言われている差し止め訴訟なども含めた行動に移れるかどうかは依然不透明で、今後ますます事態は混迷しそうです」