温暖化などの影響でサンゴの白化現象がおき、石垣島沖のサンゴ礁域「石西礁湖」では去年、全体の7割のサンゴが死滅したというショッキングな報告がありました。そんな中、QABでは先日、石西礁湖にカメラが潜りサンゴの卵が生まれる瞬間の撮影に成功。サンゴの復活に向け希望の光を見つけました。
しかし、サンゴ復活の道のりはまだまだ越えなければならないハードルがありました。野島記者のリポートです。
満月の大潮の夜に産卵すると言われるサンゴ。私たちは石垣島の海に向かいました。取材を始めて2日目。ついに満月の日を迎えましたが、この夜、産卵は見られませんでした。
野島記者「条件はそろっているんですが、なかなか産む感じがしないですね」
しかし、3日目の夜。ついに、一部のサンゴが産卵を始めました。「バンドル」と呼ばれる卵子と精子が入ったカプセルが次々と水中にはなたれあたりは幻想的な光景に包まれました。
そして5日目の夜。私たちが去年から撮影を続けてきた巨大テーブルサンゴが産卵しました。「ハナバチミドリイシ」です。その大きさは4メートル以上。
この大きさになるには10年以上はかかり、生き残ったサンゴのなかでも最大級です。
これは去年9月に撮影された同じテーブルサンゴです。ほかのサンゴと同様に白化。しかし、石西礁湖のサンゴのおよそ7割が死滅していく中で、その2か月後にはもとの色に回復、白化に耐える姿がそこにありました。
この日は、同じタイミングでほかのミドリイシの仲間も産卵しました。
琉球大学理学部・中村崇准教授「今、産卵するかどうかって本当にちょっと心配なぐらいにダメージがあったので、今回の一定の量の産卵があったというのをちゃんと確認できたというのは非常に嬉しい。これが回復のための第一歩」
希望が見えた一方で、産まれた卵がこのあとしっかり海底に根付くのか。疑問が残ると中村准教授は言います。
中村准教授「産卵しても、前みたいに高密度で(サンゴの)群体がいないので、受精効率が下がっている。かろうじて2,3群体あったとして、2、300メートル離れたところで、一群体ずつ産んで受精できるかというと、ほとんど難しい。そうすると受精効率が下がるので」
サンゴの卵は、海面まで上昇して混ざり合うことで受精します。中村准教授はことしは、生き残ったサンゴが少ないため回復は遅いと予想しています。
これは、産卵の後にサンゴの子どもが海底にどれだけ根付いたかを示したグラフです。ここ10年間の調査で、大規模な白化現象が起きると、その後、数年間、激減することが分かってきているのです。
先月、沖縄で行われた緊急対策会議。50年後の2070年には、日本近海からサンゴが消滅するほか、今後は地域によって白化が毎年起きる可能性が指摘されました。
中村准教授「2年連続の高海水温化、白化というのがあったとすると、生き残っているサンゴにも非常にすでにダメージを受けている状態なので、追い打ちをかけるような状態になるんじゃないかと。そこは非常に懸念しているところ。水温が上がっていくと、病気はスピードが上がりやすいといわれているので、このあと夏にかけて水温が上がってくると、よりホワイトシンドローム等の病気の症状というのが顕著に表れてくるんじゃないかと思う」
希望ともいえるサンゴの産卵がみられる一方で、楽観視できない状況に、早急な対策が課題となっています。
やっと生まれた卵が、命を結ぶことを期待したいですね。まだまだ安心できないということですが、それにしても7割が死滅した海で卵を産むサンゴの姿は自然の強さを見せられた感じがします。その自然の豊さに応えるためには、人が自然環境を守ることを怠ってはいけないと警鐘を鳴らされているようにも思います。