皆さんは沖縄の基地についてどれくらい理解していますか?実は県は「沖縄から伝えたい。米軍基地の話Q&ABook」を作成しました。こうしたQ&A形式で県が発行するのは初めてなんですが、この冊子が作られた背景と込められた思いを県側、そして専門家それぞれの立場からお聞きしました。
『Q.米軍基地がなくなったら沖縄の経済に悪影響があるのではないですか?』
「あると思う」「ないと思う。今は基地で収益はないでしょ。縮小したらいいと思う」「ある。何らかの影響はあるのかな」「悪影響はない。観光でやっていけると思う」「ある。そこで働いている方もいるので、そこが悪影響なのかな」「あるんではないですか?基地の中の人たち雇用とかの関係で、なくなったら経済に悪影響があるのではないかと思います」
漠然と「悪影響がある」と考えている人は少なくないようですが、しかし・・・
『米軍基地が整理縮小され、返還後の跡地利用が進めば、県経済に好影響を与えると考えています』
こう回答したのは県が3月に出した「沖縄から伝えたい。米軍基地の話Q&ABook」。
「何もなかったところに米軍基地ができて、周りに人が住んだのではないか」「地主は大金持ち」など、アメリカ軍基地を巡る様々な誤解に対して丁寧に解説しています。なぜ県は「基地Q&Aブック」を出したのでしょうか?
謝花知事公室長「誤解といいましょうか、本土の方、沖縄の若者を中心に十分に理解していない部分があるということで、私共としてはやはり県外の方はもとより、沖縄県民に対しても正しい理解を求めるそのきっかけになればと思いまして作ったものです」
沖縄に対する誤った情報や根拠のない中傷が広がっている事例が散見され、基地問題の解決を遠ざけているとして、正しい情報を発信することが狙いだといいます。
冊子が発行されたことについて県外で基地問題について講演を行うことが多い専門家は・・・
沖縄国際大学・前泊教授「ようやくでたか、もっと早く出すべきだと思います。沖縄の経済について、沖縄の基地について、誤解が非常に多い。こういったものを都市伝説みたいなものを払拭して、事実を知らせるのはとても大事だと思います」
正しい情報を沖縄から発信する「基地Q&Aブック」作られた目的はそれだけではなく、その先には大きな目標がありました。
謝花知事公室長「根底にあるのは日米地位協定だと私は考えております。沖縄県も平成12年に(日米地位協定の改定)要請をやった訳ですけど、それから動きがないわけで、その間、色んな事件・事故の情報などを入れながら、地位協定の改定というものを全国の問題としてやっていきたい」
日米地位協定の見直しについては国民に沖縄を現状を正しく理解してもらい、日本全体で考えていく必要があると冊子でも指摘しています。
日米地位協定の改定を目指す上で、冊子が果たす役割について前泊教授はこう評価します。
前泊教授「このブックの中で特徴的なのは、ドイツやイタリアの事例、韓国も含めて、同じように地位協定を持っている地域がちゃんと改定してますよと実例を挙げている。日本の国民を守る、国民ファースト視点であれば地位協定は改定できます。今はアメリカファーストという形で取り組んでいるから改定ができない。その意識を改革もたらすには非常にいいブックだと思いますよ」
ただ県が作成した冊子をこう評価しつつも、県外の人たちへ基地問題を理解してもらうことはそう簡単ではないと指摘します。
前泊教授「自分たちの問題を自分たちの視点で、自分たちだけが発信をするということになると、どうしても『あの問題大変だよね』ということになってしまう。その中に30都道県の基地の問題にしてもまんべんなく同じような問題が起こっているということを伝えていくことが大事。そうすると同じ仲間意識、問題を抱えている地域として共通認識ができて、そこで共通して解決に向けて動き出すというパワーができる気がします」
謝花知事公室長「知るというのは中々難しいと思うんですよ。ただ、正しい情報を理解するそこから始まって、本当の意味で知ると沖縄の痛みを『チムグクル』でもって沖縄の基地問題を自分のことのように理解してもらうきっかけになればという思いでこのQ&Aを作っております」