さて、先ほどは今どきのシーミー事情をお伝えしましたがここからは、今どきのお墓事情についてお伝えします。
那覇市がまとめた市内の個人墓のデータ、10年ほど前の調査で1万7000を超えるお墓があり、さらに今後も増えると予測しています。(平成14年度那覇市調査)
お墓の問題はある意味避けては通れない問題ですが取材してみるとそこには様々な課題がありました。
人口増加や世帯分化などによって個人墓をもつ人が急増する那覇市。中でも識名や真嘉比など、お墓の多い地域では様々な課題が生じています。
その一つが「無縁墓」です。お墓の後を継ぐ人も管理する人もいないままに取り残されてしまったお墓は、およそ400基。(H14年度)
さらに、およそ1万1000基が今後無縁墓になる可能性があると予想されています。また、「無許可墓」の数も急増していました。
個人でお墓を造るには「墓地埋葬法」に基づいて市長の許可が必要ですが、その許可を得ずに造られたお墓は推計1500基。(平成8年度から平成14年度の間)
那覇市によると戦後の混乱の中、ほとんどのお墓が無許可で建てられたことが背景にあり「法」が周知されないまま、現在も無許可でお墓を立ててしまう人が後を絶えない状況もあるようです。
沖縄関ケ原石材・緑間禎社長「大丈夫さ~みたいな、ウチナーンチュのいいところであり悪い所でもあるんですけど。そのあたりは業者を選んでいただいて、一生に一つのものですから、われわれも責任があるわけです。そういった意味で業者選定も必要なのかなと思っています」
こうした個人墓の増加はシーミーなどの際の交通混雑やゴミ放置の問題を発生させ、周辺の住環境を悪化させる問題として長年住民の頭を悩ませています。
こういった問題のひとつの解決策としてのヒントがあります。16年前に開園した、こちらの管理型公園墓地。家族形態に合わせた様々な形のお墓、およそ1800基が立ち並んでいます。
中城メモリアルパーク・東恩納寛寿さん「山間とか畑のところにあった不便なお墓を、老朽化が進んでいて、そこからうちのほうに移ってきたいというお客さんが多い。大きく分けて3つございまして、1つは家族が子々孫々継承していくタイプの一般的なお墓。それからご夫婦とかお友達などで入れる家族墓、期限がついているんですけれども、50年だったら50年、13年だったら13年ということで期限付き墓と、もうひとつは永代供養墓ということで、皆さんが共同で入るお墓この3つになります」
中でも、お墓を持たない、永代供養を選択する人は多いといいます。
永代供養を選んだ人(「娘4人だから。みんな長男のところへ嫁いでますから、そのほうが安心ですよね、もう80前だし。みんな生活でいっぱいですよね。だから子どもに迷惑かけたくないから。もう安心」
中城メモリアルパーク・東恩納さん「自分が元気なうちに、まだ体も動けて判断ができるうちに申し込みをするというかたが増えてきております。これも1つのキーワードとしては、子どもに迷惑をかけたくない、そういった気持ちから申し込みをするかたが増えています。皆様が困らないように、不安にならないような、ライフスタイルに合わせたお墓が浸透していくのではないかなと思っております」
那覇市でも課題の解決に取り組もうと、2014年に那覇市民共同墓の供用をスタートさせました。お骨の短期収蔵から永年納骨埋蔵まで市が管理する共同の墓です。
共同墓に両親が眠る男性「すぐこの下のほうで(お墓が)あったわけですけれども。自分の甥っ子に頼んで作ってあったんですけど、後を面倒みる人がいないので、ここへお願いしてお預けしたんです。私たち夫婦もここ希望しているんです。手続きが取れたらお世話になろうと思って」
女性「最初は集団で入るっていうのは不安もあったんですけど、もうここに来てみて、いいところで。父も母も、故郷の近くですから、非常に安心して。古い墓の心配もなくて安らかに眠っていると思いますので、安心しました」
誰にでも必要とされるお墓。先祖を敬う気持ちと同様に、家族の今後を話し合うことが求められています。
取材にあたった金城記者です
金城記者「もう一度、整理してみましょう。取材した那覇市では無縁墓や無許可墓が増加したことによって、周辺住環境の悪化が問題となっています。これらの解決策として市民共同墓など、ライフスタイルに合わせたお墓が造られました。しかし、解決のためには、市と墓の持ち主、双方がしっかり今後を考えなければなりません。無縁墓が増加する背景には、後継者の高齢化も関係していることから課題を先送りしてしまうと、問題はより深刻になります」
VTRを見ていると、多様なお墓の形がありましたね。
金城記者「他にもこれまでとは違ったお墓もありました。例えばこちらです。一般的には名前が刻まれたりしますが、好きな文字が刻まれています」
金城記者「最近では家族に限らず、仲の良かった友達同士でお墓にはいる人もいるようです」
多様な生き方があるように、多様なお墓への考え方があって受け入れる霊園もそのニーズに応えているんですね。
金城記者「亡くなった方への供養の思いは決して変わらないものですが、残された親族への配慮が、今どきのお墓を生み出す背景となっていると感じました」