南城市では県内の市町村としては初めて今月から市内11の小中学校で「弁当の日」を始めました。「食育」の一環としたこの試み、その背景には県内のほとんどの市町村が抱える深刻な問題がありました。
色とりどりのおかずにおにぎり。子どもたちがおいしそうに食べているのはお弁当です。
『おかあさんが作ったからおいしい、うまい!!』
南城市で「食育」を目的に今月から始まった月に1度の「弁当の日」。導入した背景には深刻な問題がありました。それは・・・「給食費問題」。
南城市は以前から給食費の滞納に苦慮していました。毎年およそ1400万円の滞納があり、合併前からの滞納総額は5400万円。不足分は市の一般財源から補てんしています。
南城市教育委員会・高嶺朝勇教育長「南城市の滞納率はワーストに近い。滞納を失くさないと健全な学校給食の運営ができない」
このままでは給食の存続が危ぶまれるという中、保護者が子どもたちの食環境について考え、子どもたちが食に関心を高めてもらうものとして考えついたのが「弁当の日」でした。しかし保護者からは「毎回作れるか不安」という声や「毎月ちゃんと給食費を払っているのに」といった反発が寄せられました。
5歳から13歳にかけて4人の子どもがいる百名さんのお宅。PTA会長を務めるお母さんの円さんも「家庭の事情で弁当を持って来られない子がいるのでは」と心配し、当初は反対していました。
しかし、子どもたちがいずれ自分たちで弁当を作れるようにするためのきっかけにしたいという教育委員会の熱意に圧され、協力することにしたといいます。
百名円さん「ウンチェー炒めは愛星が作ろう、シャケを焼くのは泰成。なるべくこの子たちに楽しく作らせたいと思っています」
献立が決まったら、みんなで買い出しに。これも大切な学びの場です。
高嶺教育長「買い物をしながら、この食材はどこでできたんだろう、どんな人が作ったんだろうとか、そういう風な色々生産者への感謝、流通する人への感謝、そういうものも生まれると思います」
「弁当の日」は全国でも実施されています。7年前に香川県の小学校が始めたのを機に、全国160以上の小中学校で実施。コンビニに行けば、いつでもインスタント食品が買える便利な時代にあって、そんな食生活では健康が維持できない、彼らが親になったときに子育てできないと、一人の教師が立ち上がったのが始まりでした。「子どもたちを台所に立たせよう」という呼びかけには注目が集まっています。
「弁当の日」の当日。百名家では朝6時から子どもたちが台所に立っていました。小学3年の泰星くんはシャケを焼く係。中学生の愛星さんは炒め物。小学1年の芽愛さんと保育園の実莉ちゃんも、きゅうりやゆで卵を切ったりとお手伝いしました。
出来上がったお弁当はこちら。弁当箱から溢れんばかりのボリュームです。百名家の子どもたちと同様、弁当作りを手伝ったという子も何人かいました。
『卵焼きを作りました』『ゆで卵をきるのをお手伝いしました』
自分で作ったお弁当を持って登校した芽愛さんと泰成くんは…。
泰成くん「おいしかった、自信作」
百名円さん「その家庭に応じたやり方で『弁当の日』が続いていけばいいと思います」
一方、教育長は市内の小中学校を回りました。お弁当を持ってきていない子がいないか気になったのです。
高嶺教育長「朝、本当に一生懸命、前の日からも準備されたと思います。子どもたちの教育のために大事だからという理解が得られればありがたい」
この日、お弁当を持って来られなかった子も3人いました。そのことで寂しい思いをするのでといった心配やこれが給食費問題の解決につながるのかといった疑問は拭えませんが、南城市では保護者に協力を求めながら前向きに続けていきたいと話しています。
おいしそうにお弁当を食べる子どもたちの表情が印象的ですが、持ってこられない子はどうしているんですか?
島袋記者「学校がお弁当を用意し、後日代金を請求することになっています。やはり保護者の協力が不可欠ということです」
給食費の解決につながるんでしょうか?
島袋記者「まだ始まったばかりでわかりません。ただ、もともと給食というのは市町村が義務で行っているものではなく、このまま滞納が続けば、給食をやめるという市町村も出るかもしれません。給食の問題は、もはや学校や教育委員会だけの問題ではなく、子どもたちの食をどう守るか家庭や地域も含めてみんなで考えなければならないといえるかもしれません」