ベトナム第3の都市・ダナン市から車でおよそ3時間。田舎道をひた走るとクアンナム省に入ります。この山あいの地域を1月、沖縄の市民グループが訪ねました。
訪れたのは「アレン・ネルソン奨学会」のメンバー。彼女たちの目的は、ある男性の遺志を継ぎ、ベトナムの子どもたちに奨学金を届けることでした。その男性は、アレン・ネルソンさん。かつて沖縄のアメリカ軍基地で訓練を受け、ベトナム戦争に行った元海兵隊員です。
1960年代に泥沼化し、およそ300万人が犠牲になったベトナム戦争。貧しい家に生まれたアレンさんは18歳で軍隊に入り、戦場の最前線に送りこまれました。しかしそこは地獄そのもの。無知な青年は、罪の無い人々への暴力に手を染めていました。
アレン・ネルソンさん「殺せ、ライオンのように戦うのだと命令された。ベトナムではたくさんの死を目の当たりにした。戦争は映画とは違うのです」
戦争の真実を伝えようと沖縄にも毎年のように訪れていたアレンさん。しかし8年前、病で亡くなりました。奨学金は、アメリカ軍が凄まじい暴力を奮った、ここクアンナム省で、かつてのアレンさんと同じ、貧しい境遇に置かれた子どもたちに贈られています。スタートから8年、延べ580人がおよそ半年分の学費にあたる2500円を受け取っています。
児童「(Q将来は何になりたいの?)お医者さん。社会に役立つ人になりたいです」
児童「(Qお勉強は何が好きですか?)英語(英語が好きなの、すごい!)すごい。」
児童の祖母「勉強のために送迎とか頑張っています。お父さんは出稼ぎで忙しいので、おばあちゃん一人で世話をしています」
5年生のフー・ユンくん。成績が優秀だということで奨学金を受け取りました。沖縄から訪れていた一行は、ユンくんの自宅を訪問しました。
母親「(Qすごい兄妹仲良いですね)妹のことを凄い面倒見ています。可愛がっています」
ユンくんの家族は4人。借金を抱え、お父さんは出稼ぎに出ているため、お母さんが1人で家事と育児に追われています。幼い妹は体が弱く、ユンくんは子守りをしながら勉強を続けているのです。
ユンくん「(Q将来は何になりたいですか?)お医者さんになりたいです」
母親「兄弟仲良しでいてほしいです。(経済的には厳しいですが)勉強は頑張ってほしいです。(Q地域の人と助けあったりはしますか?)みんな私たちのことを助けてくれます」
アレン・ネルソン奨学会のメンバー「沖縄でも「ゆいまーる」と言って、みんな助け合うことを大事にしているんですよ」
ベトナム戦争が終わって42年。都市部では着実に復興を遂げていますが、地方にはまだ、支援の手を求めている子どもたちがたくさんいます。
比嘉さん「子どもたちの笑顔が凄い良かったです」
城間さん「厳しい状況を乗り越えて、健やかに幸せに生きていく社会を、気付いたことを、できることをやっていきたい」
奨学金に込められた願い、それは、子どもたちが安心して学べる社会を作ること。その思いは、今も受け継がれています。