宮古島アームレスリング大会で10連覇の偉業を成し遂げたこの男性。3男3女、6人の子供を持つ父親。本業はカニ漁師。ニックネームは海老蔵ならぬ蟹蔵、吉浜崇浩さんです。今日のQ+リポートは「故郷・伊良部島の海を守るため蟹養殖にかける男性」の物語です。
伊良部島・佐和田地区にあるマングローブガニ養殖場「蟹蔵」。
吉浜崇浩さん「秘密のカニの家があります」
人工的な装置がたくさん並んで養殖しているかと思いきや、随分アナログ。カニが生息する環境に近づけるためなんだそうです。
吉浜さん「アミメノコギリガサミです。ガサミというとこれが中心です。ノコギリガサミの王様。サイズも大きくなるしうまいんですよ」
世界的にも珍しいガザミの養殖を始めて15年。その原点は何と自宅のベランダです。
吉浜さん「(Q:これは何ですか?)これは初代のカニ飼育ケースでして」
ペットボトルの中に稚ガニを入れ、養殖。大きく成長させ出荷していました。このスタイルがメインだった蟹蔵ですが、最近、新たなことにチャレンジしているのです。
吉浜さん「(Q:これは何ですか?)自然界で、戦いか何かで敵にやられて、手がもげたりとかしているカニだと思うんですが、これが生えてくるんですよ。水が良くて、エサが十分だと、手が生えてきて、次の脱皮で再生してくれるので。ちょっと触ってください。(プルプルする!)」
傷ついたガザミを保護し、回復させ海に放流。実は蟹蔵、養殖したガザミを出荷する一方で、海に放流しているんです。そのわけとは・・・
こちらは蟹蔵の仕事場。マングローブガニが生息するエリアです。
吉浜さん「昔はたくさんいたんですよ。でも環境が悪くなってきて、生物が減ってきている。だから自分たちがこれからの漁師の在り方として、どれぐらい守れるかというのを自分はテーマとして掲げている」
ガザミの個体数を増やし、島の生態系を取り戻そうと、今まで1000匹以上は放流したそうなんです。しかし、そもそもなぜ、ガザミの数が減少しているのでしょうか。
吉浜さん「珍しい生き物だと、メジロザメがいたりとか…。やはり環境が変わってきている」
「伊良部島の入り江の環境」が外海化してきているそうなんです。その原因となっているのものとは?
南北、およそ5キロにわたって切り開かれている入り江はまさに大自然。
吉浜さん「あの網を上げましょう!あれはうちの網です。ノコギリガザミです」
多い時だと1つの網で10匹以上獲れることもあったそうですが、ここ最近、急激に減ってきているそうです。
と…ここで少し変わった船を発見。
スタッフ「これスゴイ船ですね?これで(カニ漁を)やっているんですか?」
『1人用です。無免許で乗れる船なんです』
カニ漁専用の小型船です。
さらに奥へ進むと、その実態が明らかに…
吉浜さん「(Q:この辺は新しく埋め立てていますよね)昔は遊び場だったんですよ。多分あと5年10年するとこういうのがバンバンできる」
住宅開発のために埋められたり、また民家から出る排水の流れを良くしようと入り江を堀り返したり…。伊良部島の自然が破壊され、入り江の中の生態系が変わってきています。
吉浜さん「どんどん自然がなくなるし、島の故郷が故郷じゃなくなってきている。生き物の目を見たときに、生き物のメッセージ的なモノを、勝手に自分が解釈したかもしれないが、その時代時代に訴えているような感じがして…。だからもったいないって、大人になればなるほどそう思って」
『故郷・伊良部島の海を守る』
蟹蔵は島の入り江の環境をもっと知ってもらおうと、カニ養殖を手掛ける傍らで、カニ漁体験ツアーのガイドも行っているんです。
吉浜さん「フィールド(入り江)も一緒になって守っていこう。守っていこうというのは“いい海だよ。綺麗だよ”って皆さんに伝えてもらうと、皆さんがあそこの海はやはりいい海だよって、一緒になって思ってくれるのが一番の力だと思っているので。それを伝えていきたい」
伊良部島の海を守るため、蟹養殖にかける男。その名も「蟹蔵」。彼の挑戦に終わりはない。