この春、座間味中学校を卒業した、田口はなさん。4月から島を離れ、那覇高校に進学します。はなさんが新生活をはじめるのは、高校のない離島から進学する生徒を受け入れる学生寮。今年オープンしたばかりです。
田口はなさん「これどうする、全部開けるってこと?」「高校も近いから、安心です」
入学目前の3月、一足早く荷物が運びこまれた部屋は、年頃の女の子の部屋に様変わりしました。
田口はなさん「友達もここならいるし、ご飯も作ってもらえるので、安心です」
母・由花子さん「長い間(離島住民の)要望があったことが実現できたので、声をあげ続けてくれた人とか、このために努力してくれた方に感謝ですね」
旅立ちの前日、島に戻っていたはなさんは、島の想い出の場所を巡りました。幼いころから成長を見届けてきた地域の人たちも、励ましの言葉をかけてくれます。
地域の男性「不安もいっぱい、期待もいっぱい。学校はどこ?」
田口はなさん「那覇(高校)です」
地域の男性「大変だ、ゼロ校時もあるでしょ。うちもお姉ちゃんがそうだったから。がんばってね」
高校のない島に産まれた子どもにとって、15歳での巣立ちは、宿命。島の人は、その姿を若き日の自分と重ね合わせます。しかし、はなさん自身には、まだ島を離れる実感がありませんでした。
田口はなさん「先輩たちが出て行っても、あんまり自分が島を出て行くっていう感覚はなかった、もうすぐ出てくんだなって思ってるけど、また帰ってきそうな感じもしてるっていうか…」
田口はなさん「幼稚園からずっとここで、小学校も中学校も」
幼稚園からの10年間を過ごした学校を訪ねると、はなさんがつい最近まで使っていた教室には、自分の机はもうありませんでした。
田口はなさん「…持って帰ろう」
もう後戻りはできない。そう思った瞬間気持ちが切り替わりました。
中学校の先生「また新しい友達もできるはずだからね、大丈夫」「でも寮ができて本当に良かったなと思います。寮が出来たから親御さんもみんなも安心してね」「親が(上の子を)面倒みるために出て行って、そのまま下の子まで出て行ったこともあったから、だからそれがなくなるっていうのも嬉しいですよね。」
家族「門出にカンパーイ」
出発前日の食卓には、はなさんの大好きな物が並びました。家族4人で食卓を囲む当たり前の毎日も、明日からは日常ではなくなります。
母・由花子さん「もう家に子どもがただいまって帰ってこないことになったら、その時、さびしいなって思うんじゃないかなと」
田口はなさん「15年間いつも隣にいてくれて、支えてくれて、とても感謝してます。返していけるようにがんばりたい」
入寮の日。はなさんはしっかり前を向いていました。新たな部屋で、3年間のスタートを切ります。