今日の特集は、あるピアニストについてお伝えします。音楽大学に通いながら国内外で演奏活動を行う県出身の性同一性障害のピアニストがいます。自分自身と向き合い活動する中で生まれる音楽とは
東京の音楽大学に通う、南風原町出身の下里豪志さん22歳。下里さんは男性の体で生まれましたが、心は女性。高校までは沖縄で過ごし、音大で学ぶため3年前に上京しました。
下里さんは、ホルモン治療や、性別適合手術などはしていません。心の性別と同じ性別に体を近づけるよりも音楽にかける時間を最優先してきました。豪志さんを見守る母・倫子(りんこ)さん。性同一性障害が音楽の表現を豊かにしたと捉えています。
母・倫子(りんこ)さん「男の感性女の感性両方持ち揃えているので、私はいいと思います。本人も辛いこともあるかもしれないけど表に出さずに頑張っている。」
自分の性と向き合い、葛藤する心の綾も下里さんは、音楽に表現されてきたのではといいます。
下里豪志さん「嫌なことがあったりしても、抹消されたときに何もしていなければ、それはただの嫌な思い出だったかもしれないけど、音楽をしている限り、それがあったからこそ、作曲者が違う悩みであっただろうと仮定しても、そういう苦悩に満ちた内容の曲とかを弾く時にこういう風だったのかなとか。」
下里豪志さん「私は今このままの自分で常に今の自分を持って舞台に居続けることでまた明日から前に進める人が増えるように頑張って、演奏家として少しずつでも前に進めるように努力したい。」
今月3日、下里さんは初めてのソロコンサートを開くため沖縄に帰っていました。
下里豪志さん「私は絶対にソロリサイタルのデビューは沖縄でしたいって昔から決めていて。」
ドラマチックな作品を得意とする下里さん。「国際的なピアニスト」をめざし海外での演奏会や研修などを積極的にこなしてきました。去年6月に開かれた国際ピアノオーディションの日本大会では、全部門特別優秀賞1席。世界大会では3位という成績でした。
来月には、トリを務めるイタリアで開催のジョイントリサイタルを控えています。大舞台を前に、ソロコンサートを沖縄で開くのは支えてくれている沖縄の人たちへの感謝と決意を示したいという思いからです。
下里豪志さん「私が今できるお礼っていうのは演奏でしか返すことができないので。そのぶんプレッシャーは自分にかかってしまうけどそれ以上の応援をいっぱい受けている。」
時に優雅に、時に力強く演奏する下里さん。おしみない拍手と歓声に包まれました。
下里豪志さん「本当に言葉にできないくらいの感謝の気持ちですっごい胸がいっぱい。」
3人組高校の後輩「好きがいっぱい詰まっているかんじ」「先輩らしい。」「色っぽさというか、大人の女性の魅力みたいなものがこの演奏会全部通してすごく出ていて勉強になるなと思いました。」
ピアノ仲間の男性「沖縄を担うピアニストの一人として彼女の音楽性をもっと世界で認知されていってほしいと思います」
性別にかかわらず、1人のピアニストとして、受け入れてくれる沖縄の人たち。その気持ちが、下里さんの背中を押す大きなパワーとなって返って来たようです。
下里豪志さん「何があっても最後までこうやって見届けてくれる沖縄の人たちがこれだけいるって思ったらもっと頑張ろうという気になった。(大学生活)最後の1年ふんばるためのエネルギーチャージと決心ができたかなと思いました。」