シリーズ回顧2015。2回目のきょうは、基地問題です。辺野古の新基地建設をめぐって県と国との対立は法廷へと移っていますが、激動のこの1年を振り返ります。
ことし1月。辺野古工事再開。
沖縄が、辺野古への新基地建設反対という民意を示してわずか数カ月。政府は辺野古への作業を再開させた。「あらゆる手段を用いて阻止する」とした翁長新知事。前知事の承認に瑕疵がなかったかを検討するため第三者委員会を立ち上げた。
4月には、菅官房長官との会談が実現。翁長知事は、戦後置かれてきた沖縄の不条理さを吐き出すかのように痛切に訴えた。
翁長知事「今日まで、沖縄側は自ら提供したことはない。これは強調したい。私たちの思いとは別に、強制接収された。県民にこれまで大変な思いをさせて、今や世界一危険になったから、きけんだから大変だから、その危険性の除去のために、沖縄が負担しろと。お前ら代替案を持っているのか、日本の安全保障をどう考えているのかと。沖縄県のことも考えているのかと。こういった話がされること自体、日本の国の政治の堕落ではないかと思っている。」
しかし政府は、「辺野古が唯一の解決策だ」さらには、辺野古に移設できなければ「普天間の固定化につながる」との姿勢を崩さなかった。こうした政府の姿勢に、翌月には、3万5000人もの県民が、反対の声を上げた。
翁長知事「ウチナンチュ、うしぇーてぃーないびらんどー!」
その後、知事はアメリカに渡り、辺野古は「国内問題」と距離を置く有力議員やシンクタンク関係者と精力的に面談。その後県は、政府との5回の集中協議に臨んだものの、お互いが主張するに留まり、決裂。一旦、ストップしていた辺野古の工事だったが、粛々と再開される結果となった。
集中協議は、安保法制成立のため、批判をかわしたい政府の思惑だったのではないかとの声も聞かれた。その一週間後、知事の姿は国連にあった。もはや辺野古への新基地建設は、人権問題だと世界に訴えた。
翁長知事「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」
その翌月には、いよいよ翁長知事が、第三者委員会の「瑕疵がある」との報告を踏まえた形で、最大の権限である「埋め立て承認の取消を発表」。
これにより辺野古での工事は、法的な根拠を失ったが、政府はわずか2週間で、その「効力の停止」と、さらには、国が県に代わって埋め立てを承認する「代執行訴訟」に向けた手続きに踏み込んだ。
菅官房長官「本件取り消し処分により、普天間飛行場の危険性除去が困難となり、外交防衛上重大な損害が生じるなど、著しく公益を害するとの結論に至りました」
2日後、政府は辺野古での工事を再開。本体工事に着手した。
ゲート前で抗議する人はー「悲しいです。悔しいです。未来が壊れるようなことはしてほしくないです」
翁長知事「政府は『沖縄の人々の気持ちに寄り添う』と言っているが、本件を巡る一連の行動から、そのような意思は微塵も感じられない」
さらには、警視庁からの機動隊も投入され、辺野古のゲート前は、これまでにない混乱を見せた。そのような中、辺野古をはじめとする区に対しては、市を飛び越えて、交付金を出すことも決めた。地方自治の在り方まで揺さぶるやり方に、批判の声が高まった。
稲嶺名護市長「これが法治国家としてやることなのかなと」
しかし、こうした不条理を付きつけられ続ける沖縄に多くの支援も寄せられるようになった。その額は、すでに5億円を超えた。
毎日早朝から行われるゲート前の抗議行動には、県内の若者を始め、県外、国外からも著名人や退役軍人らが訪れるなど運動は広がりを見せ続けている。
こうした運動が広がりを見せる一方、政府は、沖縄の基地負担軽減をアピールすることにも余念はない。今月4日には、普天間基地と浦添市のキャンプキンザーの一部返還を前倒しすると発表。
しかしこうした基地負担軽減に対しては、その範囲が限られていることや、先行きが不透明なケースも多く、県内での懐疑的な見方は根強い。
山口佐賀県知事「私全くこの方向性については白紙です」
佐賀空港への普天間のオスプレイ訓練移転では、地元の反対を受ける形で、白紙となった。知事選前のアピールだったのでは。そんな疑問を唱える人もいる。一方、政府は見えにくい形で、負担軽減と逆行する姿も見せている。
伊江島の農家の人「うちなんか農作業できないのに、うるさくて。テレビの音量もあげないと聞こえないわけよ」
伊江島の飛行場では、強襲揚陸艦の甲板と同じ長さの、オスプレイや戦闘機の訓練施設の建設が進められている。基地負担軽減への不信感は、いまだに根強いものとなっている。
こうした中、沖縄県は来年にも辺野古を巡って国を訴える見通しだ。法廷での争いの行方が注目される一方で、年明けの来月24日には、宜野湾市長選挙も控えている。
普天間基地、そして辺野古を巡り、再び沖縄の民意が問われている。