笑顔で握手をする岸田外務大臣。
これは先月28日、日米が環境補足協定の締結に署名した際の様子です。広大な基地返還を前に画期的な協定と期待する声もあるようですが、実態は意味があるのか懸念する声もあるようです。
取材にあたっている野島記者です。この辺はどうなんでしょうか?
はい、この協定ですが、一番のポイントは、アメリカ軍基地内で環境汚染が疑われたときに基地内に立ち入ることができるということです。はい。まずこちらをご覧ください。
これは、おととし、宜野座村のキャンプハンセンで起きたアメリカ軍ヘリの墜落事故です。機体が炎上して周辺の土壌や近くのダムが油などで汚染されないか心配されたんですが、県や村の立ち入りが認められたのは、事故から7か月も後のことでした。
一方、こちらはことし3月に返還された宜野湾市の西普天間住宅地区です。返還軍用地の場合、返ってきてから汚染が発覚するケースがあるため事前にきちんと調査することが求められています。
今回の協定では、こちらにあるようにまず環境事故が起きた場合。そもそもアメリカ側からの通報があることが前提なのですが、日本側が立ち入りを求めれば、アメリカ側は「すべての妥当な考慮を払う」「迅速に回答する」ということが決められました。
一方、返還前についてはおよそ7ヵ月前からの立ち入りを認めるというものになっています。一見、前進とも取れる協定ですが、県の担当者は、一定の評価をしつつもその実効性には懸念を示しています。
県環境部松田了基地環境特別対策室長「少なくとも3年前には環境関係の立ち入り調査を実施しないと返還されてすぐに事業に着手するということはできないと。そういった点が考慮されていない、配慮されていないということは非常に残念。すべてに妥当な考慮を払うと、米軍側はそういう風な表現になっているが、実際米軍側の運用にゆだねられるということになると。立ち入りに関する基準、そういったものを明確にしてほしいと。これまでも当然その手続きはありますが、なかなか県が環境の調査のために立ち入ると言ったようなときには認められないと」
Q,なるほど、これ以外にも問題点はありますか?
はい。また別の問題点として、今回の協定は、あくまで前知事が埋め立て承認をした際の事実上の条件の中に含まれていたものということです。知事選前の去年10月に、実質合意していたものですので、新たな基地負担軽減策といったような誤った印象を受けないようにすべきと思います。
また、協定締結のタイミングにも問題があると指摘する声があります。
沖縄生物多様性ネットワーク河村雅美ディレクター「国防長官と外務大臣の会談で辺野古新基地建設の推進が確認されていくのと同時にこの協定が結ばれるというタイミングは、大変問題だと思っています。今まで地位協定の環境の面で、きちんとその欠落が埋められていなかったということだけなので。きちんと別建てで解決する問題であって、基地負担軽減という土俵で、解決される問題ではない」
はい。ご覧いただいたようにまとめますと大きく分けて3つの問題があると思います。
まずは、環境補足協定は、まず辺野古問題と同じテーブルで話すことではない。そして、あくまでもこれまで足りなかったことを補うもので、決して基地負担軽減の話ではない。旧来の合意事項と比べても、踏み込んだ取り決めがあるものではない。
こういった点を認識しておく必要があると思います。