地元の合意なしに政府が行った閣議決定に関係する自治体からは一斉に反発の声があがっています。在日アメリカ軍再編計画を実施するため、政府は普天間基地の辺野古沿岸部への移設案を基本に早急に建設計画を策定することを盛り込んだ「政府の取り組み」を閣議決定しました。
額賀防衛庁長官「沖縄県としては沖縄としての立場主張もありますのでそれについてはしっかりと協議をして問題解決のために最善の努力をしたいと思っています」
閣議決定では、沖縄の海兵隊員8000人をグアムに移転することや、牧港補給地区や那覇軍港など嘉手納基地より南の基地の返還を、最終報告に示された2014年完了という返還時期を踏まえて着実に実施していくと明記しています。また普天間基地に関しては政府案を基本に早急に建設計画を策定するとしていて、県が求めているキャンプシュワブ陸上部分への暫定へリポートの建設は触れられませんでした。
一方、これまで県の立場を尊重してきた小池沖縄担当大臣は今回の決定に次のように注文をつけています。
小池沖縄担当大臣「今後とも地元沖縄の意見に耳を傾けて対応していかなければならないと考えています。今後の協議において、沖縄の意向を反映できるよう努力したい」
稲嶺知事「各地域と十分の対応していくという事であったがこの辺について十分ではなかった」
牧野副知事「閣議決定には容認していない。その前提の協議には対応できない」
宜野湾市伊波市長「地元の合意もないままいろんな事が行われるとなるとますます、実現の可能性は不透明になるのでは」名護市島袋市長「我々の意見も入れて欲しいといってきたが今回入っていないという事であります。協議機関を設置する事になっているのでそれを踏まえて調整していきたい」
平良夏芽さん「県ときちんと話し合うことなしに反故にしていくのは政府が県や県民をどれだけ軽視しているかという証拠だと思う」
名護市民「決まったんですか、残念ですね。涙が出るほど悔しい」宜野湾市民「普天間の移設は嬉しいが名護に移すのは心が痛む」那覇市民「もう押し切られてしょうがないんじゃないの結局島国ですから押し切られて権力に」
在日アメリカ軍再編の最終報告をうけ「的確かつ迅速に」と実施の方針をきめた今回の閣議決定ですが、前回、99年の決定とどう変わったのかを比べてみます。
今回、大きく違う点はまず建設場所が明記されていないこと。前回はキャンプ・シュワブ水域内、名護市辺野古沿岸域が特定されていましたが今回は「日米両政府で承認された案を基本に」政府と県、および関係自治体でつくる協議機関を設置し建設計画を策定すると記されています。
また前回は施設受け入れさきの名護市など、北部の振興策に取り組む方針が明記されましたが新しい閣議決定ではこれを「廃止」とし、各地の地域振興事業は2006年度までに打ち切られこれにかわる地域振興策は協議機関での検討項目となる見込みです。また、前回の閣議決定で明記されていた民間空港の機能をもつ「軍民共用空港」や、「15年間の使用期限をアメリカ側と引き続き協議する」などの文言も白紙となりました。滑走路の長さや数なども明記されていませんが「普天間飛行場の危険性の除去に留意する」という言葉があらたに示されています。
では、東京で取材をした謝花記者に聞きます。謝花さん、間近で見る、稲嶺知事のきょうの表情はどうだったんでしょうか。
まず、最初に知事の口から出た言葉が『閣議決定は政府が行うもので国には国の考えがあると言うことは理解している』という言葉でした。続いて『しかし県は県の考えがあり今後も主張していきたい』と述べたわけですが、それも閣議決定が不本意な形になったにしては発言内容が弱いという印象がぬぐえず、その裏には、閣議決定への不満がある一方で、政府との対立を避けるために今後どうしていくかということが知事の胸にあったためと思います。
稲嶺知事の不満というのは、具体的にはどういうことですか?
稲嶺知事は多くを語りませんでしたが、県が反発しているのは大きく2つの点です。まず、普天間基地の移設について、日米が合意した2本の滑走路を持つ案で建設を進める形になっていることです。県はこの沿岸案に反対し、代わりにキャンプシュワブ陸上部分に暫定的なへリポートの建設を求め、普天間基地の一日も早い危険性の除去を訴えてきました。しかし、暫定へリポート案は記されませんでした。
もう一つは、前回の1999年の閣議決定が廃止されたということです。前回の閣議決定には、15年の使用期限についてアメリカ政府と協議していく、そして軍民共用空港を念頭に整備していくという、基地の固定化と専有化を避けるという県の方針が反映されました。しかし今回の閣議決定ではこれらは記されていません。
ようするに、今回の閣議決定では、稲嶺知事が基地の固定化を避けるために何度も主張し決して譲らなかった使用期限が全く無くなってしまった。政府が永久的な新基地建設に踏み切る一歩が記されたと言うことなんです。
Q.政府は辺野古沿岸案の建設計画を早急に策定するといっているんですよね、その建設計画を策定するための協議会に、県は参加しないと言っているんですが、今後どうなるんですか。
稲嶺知事は、その協議機関には参加しないが、政府とは協議を続けていく考えです。稲嶺知事は政府との断絶を何とか避けようとしていて、これは8年前に政府との関係を修復するために出馬した稲嶺知事のいわば信条なわけです。しかし、政府としては暫定へリポートは考えておらず、このままでは建設計画にあの2本の滑走路を持つ施設の案が示されることが濃厚と思われます。
ただ、閣議決定の実現性ということを考えると、辺野古沖へのヘリ基地建設計画を盛り込んだ前回の閣議決定は結局実現しなかったわけで、今回の辺野古沿岸案には県も反対していて前回よりも難しくなっているわけです。こうしたことからも今回の閣議決定は、政府が来月予定されているアメリカのブッシュ大統領との会談までに何とか間に合わせるように行った見切り発車という感が強く現れていて、また実現しない閣議決定を重ねるのか、普天間基地の返還は、そしてほかの基地の削減はいったいどうなるのかとやりきれない思いがします。