アメリカ軍は、最新鋭の迎撃ミサイル『パトリオット』を嘉手納基地に配備することを決めました。しかしなぜ基地の負担軽減をどこよりも願う沖縄に、嘉手納基地に配備するのか。また、他国の標的になるのではと、疑問や不安が渦巻いていて、周辺自治体も強く反発しています。
きょうの検証動かぬ基地は、パトリオット配備の持つ意味や影響を探ります。
嘉手納町民「(Q:よその国からミサイルが飛んできた場合、そのミサイルを打ち落とすミサイルを(政府が)嘉手納基地に置こうとしている)だから、これ大変だね。」「反対です。危なくなりますからね。(Q:危なくなると言うと?)狙われるじゃないですか、沖縄が真っ先に。」「それはもう絶対に許せるわけはない」「今でも戦争みたいな感じです。爆音は強いし、朝から晩まで。その上にまたミサイルが来たら、10月10日空襲のようになる」
謝花記者「パトリオットの配備に嘉手納町民は一様に強い不安を感じています」
「愛国者」という名のパトリオットは、他国から発射されたミサイルを着弾前に撃ち落とす最新鋭の迎撃ミサイルです。北朝鮮の弾道ミサイル『ノドン』に対応するとされていて、アメリカ政府は嘉手納基地に24基配備することを決め、先週、日本政府に通告しました。
この動きに対して、嘉手納町議会はきのう緊急の基地対策委員会を召集し、パトリオットの配備は住民の負担増加で基地機能の強化だとして、配備計画の撤回を求める抗議決議をあさってにも採択する方針を決めました。
基地対策委員会・田仲委員長「さらにミサイルが配備されると、嘉手納基地が大変な基地になってしまう」「国防という問題があっても、住民に(これ以上)負担がかかってはならない」
しかし外務省沖縄事務所では、嘉手納基地への配備が決まったとは聞いていないと言いながらも、配備に理解を求めます。
共産党県委員会・赤嶺委員長「抑止力の維持どころか、抑止力と言う米軍態勢の強化でしょう」「その対象に沖縄の既存の米軍基地を選ぶんですか。」
外務省沖縄事務所・倉光副所長「専守防衛を言っている日本に最も似つかわしいものであって、間違ってもこれは攻撃する手段にはならない」
さらに
倉光副所長「県民のみなさんが仮に『我慢できない』と言ったとしても、日本の平和と安全を守るためにやらなければならないことはやる」
アメリカの軍事戦略と日米の軍事協力の動きを見つめてきた我部政明さんはこう語ります。
琉球大学・我部教授「(今回の)米軍再編が純軍事的な観点から進められているので、当然政治的な側面である地元住民の声は斟酌されない(くみとられない)」「批判があっても自分たちとしては変えるつもりはないということでは」
そして、嘉手納基地への配備が周辺の国に与える影響に警鐘を鳴らします。
我部教授「(パトリオットの配備が周辺国に)戦争の準備として見られるかもしれない。まず守りを固めてから攻撃に転じようとしているのではないかと思うわけです。そうすると攻撃をしようとしている準備として、一環として守りを固めているという風に見える。どちらも望んでいない戦争に突き進んでしまう可能性がある」
一方、軍事評論家の田岡俊次さんは、パトリオットの日本への配備自体を疑問だと話します。
軍事評論家・田岡さん「(パトリオットが)完全に実用化してるかどうかまだ怪しい」
そして嘉手納基地が重要な基地だから配備するのかという質問にも
田岡さん「嘉手納基地もあまり重要ではない」「(F-15部隊を)グアムやハワイに持っていく可能性が相当ありますから」
では何のための配備なのか。田岡さんはラムズフェルド国防長官の私情や支持者への配慮が背後にあるのではと指摘します。
田岡さん「ラムズフェルド氏は国防長官に就任する前から、弾道ミサイルに対する防衛のロビーストかと言われたぐらいえらい熱心」「ミサイル防衛を自分が在任中に実現させたという実績をつくりたいのでは」
パトリオットの配備に県内でこれだけ不安が広がる中、政府はいまだに情報の開示を避けています。
防衛庁・額賀長官「まだ具体的に何月何日までにどこどこへということが決まっているとは聞いておりません」「日米間で協議中」「最もふさわしい場所が日米の間で考えられ、地元の理解を得ることが大事」
政府は、再び日米間で全て決まってから地元に明らかにする姿勢です。嘉手納町をはじめ周辺自治体はすでに反対の方針を決めていて、地元の理解を得る見込みはありません。
我部さんが言うように、パトリオットの配備を周辺の国が『自分たちに攻撃を仕掛けようとしている』と受け止めることが本当に恐ろしい。当然どちらの国も戦争を起こそうとしていなくても、行動に対する受け止め方によって、悪い方向にどんどんエスカレートしていくということは想像に難くなく、何としても避けなければなりません。