この時期、暑くて汗ばむころになると、気になるものといえば…ちょっとむずがゆい話題ですが、きょうは「水虫」です。男性だけの病気と思われがちですが、ある製薬会社のアンケートでは女性の３人にひとりが水虫になったことがあると答えています。
以前このコーナーでもご紹介しましたがこの水虫、放って置くと足や手の爪を変形させる厄介な病気にも発展しかねません。ご家族に水虫の方がいて困ってる、というご家庭も多いと思います、今日は爪の水虫、爪白癬についてお伝えします。
薬局の店頭には今年も数多くの水虫薬が並んでいます。水虫に悩む人が増えるこの時期、売り上げを大きく伸ばしますが、では実際、水虫人口はどのくらいいるのでしょう。
望月隆教授「水虫の患者さんの数は、全国で2500万人程度と予想されています。そのうちの半分近くの1200万人ぐらいの方は爪にも菌が入っている、爪白癬の患者さんだと考えられています」
この時期、こんなに患者を増やす水虫の正体、それはカビです。
白癬菌と呼ばれるこのカビは、皮膚の角質層や爪に存在する菌。梅雨時から夏にかけ、高温でジメジメした環境が大好きな白癬菌にとって、蒸れやすい靴の中はまさに楽園といえます。
さて水虫と一口に言っても、症状やできる場所によって、４つのタイプに分かれます。
足の指の間にできるものや水ぶくれができるもの、反対にカサカサして皮がむけるもの。それともうひとつ、一番厄介なのが爪の水虫、爪白癬（つめはくせん）。
長い間、水虫を放置すると起こるもので白癬菌が爪の中に入り、爪が分厚く変形し、白や黄色っぽく濁ります。これが爪白癬です。見た目の悪さはもちろん、ほかの水虫の再発を引き起こす厄介者です。
水虫は誤解の多い病気です。爪の水虫、爪白癬も「爪が黄色く濁るのは老化現象」と勘違いされることが多いのですが、何と言っても最大の誤解は「水虫は治らない」と思っている人が多いことです。果たして本当にそうなんでしょうか？
渡辺教授「水虫を治す薬を発見したらノーベル賞ものだと言われてますけど、実は水虫を治す薬は既にたくさんありまして、水虫を治すことは可能です」
ただし根気が必要です。水虫が再発しやすいのは、薬が効かないためではなく、治療を途中で止めてしまう人が多いからです。そして薬を塗る部分は患部だけでは足りません。
鈴木医師「患部以外の場所にも菌が潜んでいる可能性があるので、予防的に広く塗ることをおすすめしています」
水虫薬は足の裏全体に幅広く塗りましょう。白癬菌は症状が出ている患部の近くだけでなく、周辺にも広がっていることがあるからです。
しかし、爪にできる水虫、爪白癬は厄介です。というのも塗り薬の効果が低いからです。
爪白癬の検査は爪の濁った部分を少しだけ削り取り、顕微鏡で菌がいるかどうかを観察します。もし爪白癬と分かったら、治療は医師が処方する飲み薬で行います。
望月教授「爪の水虫、爪白癬になりますと塗り薬がなかなか届かないのです。爪というのは非常に厚い組織ですし、水虫の菌は爪の奥に入っているので、塗り薬ではなかなか効きません。ですから爪の飲み薬が出ているので、薬で飲んで治す。それが最近の話題になっています」
爪白癬は薬局で売っている塗り薬では治すことはできません。爪の表面は固く、薬が浸透にしにくいからです。血管を通って、爪に運ばれた飲み薬は、爪の根元や内側から白癬菌を直接攻撃するのです。
爪白癬の薬は、飲み方に応じて２種類。一つは毎日１回、半年間飲み続けるタイプで、もう一つは、パルス療法と呼ばれる一定期間飲み、そして３週間ほど休むというサイクルを繰り返すものです。
効き目は大きな違いはなく、それぞれの特徴をよく理解して薬を選択します。
毎日服用するタイプは、パルス療法に比べて手間が掛かりますが薬代が半額で済むというメリットがあります。
爪がきれいになるまで、一般的には半年から１年ほど掛かります。治療を始めると、爪が濁ったり分厚くなった部分は、根元から正常な爪が伸びてきて少しずつ治っていきます。かつて治すのがとても難しかった爪白癬。今ではおよそ８割の人が完治するようになりました。
長い間付き会い続けた水虫の悩みから間もなく解放される男性をご紹介しましょう。東京・中野区在住のこの男性は大正２年、1913年生まれの92歳。水虫ができたのは20歳のころと振り返りますから、実に70年もの長い間、水虫と付き合ってきたわけです。
４年前、足だけではなく左手も爪の水虫、爪白癬になりました。食事や晩酌の際、黄ばんで分厚くなった爪が、家族の目にふれるようになり、治療することを決めました。
男性患者「子どもたちに汚いと言われて治さなきゃいけないだろうと」
楠医師「手はすっかりよくなりましたね。飲み薬を飲んで、(足は)まだ少し残ってますよね。もうちょっと時間がかかると思います」
きれいになった自分の爪に、男性もすっかり満足しているといいます。
男性患者「とにかく、水虫は長いですからね。(治ると)期待はしなかったですが、やったら(治療したら)最後の薬を飲む頃には(手は)良くなってましたからね」
爪の水虫ですが、市販の塗り薬では治療は難しいんですね。まずはお医者さんに相談することが大事なようです。人の目につかない足だけに、つい放っておいている方も多いと思いますが、長年のその悩み、今年こそ解決なさいませんか？