去年3月、私たちは、那覇市で始まった1つの事業を取材しました。生活保護世帯で暮らし、不登校状態にある中学生ための「居場所作り事業」。2年前、公設民営でスタートしました。「Kukulu」と名付けられたこの場所には、様々な苦しみを抱える中学生が通っていました。
ヤスくん「学校の大人は話ししてくれない。」(Q.ククルの大人は理解してくれる?)「居場所ができたさ。学校には行きたくないけどここには居たい。」
正面からちゃんと向き合ってくれる大人の存在に、子ども達は徐々に心を開き、安心できる「居場所」として通うようになります。しかし・・・。
「Kukulu」金城隆一代表(去年11月)「国の制度が変わるということで次年度未調整。その分で行くとこの事業が残るのか見えない。」
開所してわずか2年。国の制度変更のため補助額が2分の1になったことなどを理由に、那覇市は「Kukulu」の閉鎖を決めました。
神奈川県川崎市にある。フリースペース「えん」。24年前に多摩川沿いの民家を借りて、非行や不登校で、行き場のない子ども達のフリースペースとしてスタートしました。
NPO法人たまりば西野博之代表「たまりばの創成期から7年くらいは非常にバッシングを強く受けてきた。特に教育の世界では、こんな風に子ども達がみんなが学校に行っている時間に自由に過ごしている姿はけしからんと。」
川崎市は「子ども権利条例」の制定を機に2003年、「えん」は全国初の公設民営のフリースペースとなります。現在、通っている子ども達の2~3割が生活保護世帯にあるといいます。
川崎市健康福祉局 広岡真生係長「公設ですので利用料を取らないというところが1つ。貧困家庭において、多くいろんな課題を抱えている場合に公設の意味は大きい。」
「えん」も「Kukulu」と同じ。食事は毎回子ども達でメニューを決めて、みんなで作って一緒に食べます。
通っている中学生「(Q.えんのご飯は好き?)大好き。なんでもおいしいよね。」
西野博之代表「当たり前の暮らしが崩壊してご飯をちゃんと食べていない、親から声を掛けられていない。だから、ちゃんと暮らしを取り戻していく。こういう取り組みを、行政も市民も一緒になって大事だよねって。那覇で公設民営でやってきたのであれば、それはなくすのは本当にもったいない。」
金城隆一代表「ククル最後の給食です。これが最後。『いただきます』」
金城隆一代表「(Q.最後の日を迎えて)複雑ですね。1人1人に寄り添っていくと、こんなにも自分を出すし、成長するんだというのが見えました。いろんな大人たちに協力してもらわないと、たぶん子どもは守れないですよね。」
「平成26年度、ククル卒業式、閉所式を初めます。」
式では、1人1人へのメッセージが入った卒業証書が金城代表から手渡されました。通い始めた当初はゲームに夢中で口数も少なかったゆうくん。誰よりも多く「Kukulu」に通いました。
金城隆一代表からゆう君への卒業証書「何を聞いてもわからんといいながら、本当は一番理解してくれているのがあなたでした。才能だらけのあなたの可能性を十分引き出せる場所、人、夢と出会うことをいつも願っています。」
那覇市は、「Kukulu」を閉鎖し、4月から1500万円の一括交付金予算で教育委員会が行なう不登校教室の増設を決めました。学校や家庭に居場所を見いだせない子どもにとって、ここは心から安心できる場所であったことは間違いありません。
ゆうくん「(Q.どんな気持ち?)わからん・・・わからん。(Q。寂しくなる?)うん。会えなくなるからね。なくなるイコール俺なんかの居場所消えるんじゃん。」