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「長寿社会沖縄」この素晴らしい言葉も、最近では残念ながら揺るぎ始めているのが現状です。全国一とうたわれた県民の平均寿命も、男性はいまや20位以下というありさま。

肥満率は男女ともに全国1位というショッキングなデータもあり、「長寿の島・沖縄」と、私たちものんびりしてる状況ではなくなってきました。欧米型の食生活、そして運動不足という沖縄の暮らしにありがちな環境が引き起こす怖い病気、きょうは「糖尿病」についてお伝えします。

自覚症状がほとんどないまま進行する糖尿病。豊かな現代生活と連動するかのように、この病気の患者がいま増え続けています。放っておくと失明や人工透析にもつながる、怖い病気です。あなたは、大丈夫ですか?

東北大学付属病院・岡教授「糖尿病と糖尿病予備軍の患者はどんどん増えています。1997年には糖尿病と糖尿病予備軍を合わせて1370万人という統計が出ています。これが5年後になりますと両者を合わせて1620万人と、250万人増えています」

そして2010年には糖尿病患者だけで1080万人に達するとみられ、増加傾向に歯止めがかかりません。

東京慈恵会医科大学・田嶼教授「糖尿病が、このように増え続けている理由はただ一つです。日本から見ますと欧米化した食生活、そして車中心の運動しない、歩かない生活。この2つが糖尿病の人口を増やしているのです」

糖尿病は血液中の糖分の量を示す血糖値が高くなる病気です。私たちの体は食事を取ると、血糖値が高くなりますが、健康な人だと膵臓から分泌されるインスリンの働きで、血糖値は元に戻ります。これに対し、糖尿病になると、インスリンの分泌が足りなかったり効きが悪くなり、血糖値が高い状態が続きます。

岡教授「糖尿病は検査の病気と言われるのは、症状が無いときにも検査で『これはいいんだ』『これはよくないんだ』ということを確かめてほしい病気でもあるんです。ぜひ血糖値の検査を毎年するということをおすすめしたい」

糖尿病と診断されたらもちろんのこと、予備軍とわかっても、毎日の生活には注意が必要で、場合によっては医師による定期的な診察を受けることが重要です。治療の基本は食事療法と運動療法、つまり生活習慣の改善です。こうした治療を行っても血糖値をうまくコントロールできない場合に、飲み薬を服用したり、インスリン注射を始めます。

田嶼教授「食事療法の基本は1日の総カロリーを決めること、総カロリーの中で占める栄養素のバランスを考えることです。そして、その総カロリーのうち半分か6割ぐらいまでは炭水化物、でんぷんで取って頂くというのが基本です。野菜をたくさん食べるのは大変結構なことです」

糖尿病を治療したり、予備軍の人が糖尿病にならないために、食事療法と同様に重要なのが運動療法です。

岡教授「できるだけ普段、やってほしい。普段やれることというと、歩くことになります。できるだけ歩く。1日20分から30分、歩く時間を作る」

運動療法と食事療法。特別なものはありません。健康な生活を送るために当たり前のことをやるだけで、一度始めたインスリン注射が不要になる人すらいるのです。

糖尿病が怖いのは、放っておくと重い合併症を引き起こすためです。なかでも、失明の原因になる「糖尿病網膜症」や、人工透析が必要になる「糖尿病性腎症」、足の切断にもつながる「糖尿病性神経障害」は、糖尿病の3大合併症といわれています。もちろん早期に糖尿病を発見し、適切な治療を始めると、こうした合併症を発症する危険性は大幅に減ります。

大阪大学大学院 医学系研究科 眼科学教室・田野教授「糖尿病網膜症も早期発見、早期治療が原則ですから、糖尿病といわれたら、あるいは40歳を超え、中高年と呼ばれる年代になったら、年1回は眼底検査をする」

膵臓でインスリンをつくる「膵島(すいとう)」と呼ばれる組織を、重い糖尿病の患者に点滴で移植し、糖尿病の完治を目指す新しい治療が始まりました。膵島移植です。

千葉東病院臨床研究センター・剣持センター長「手術というものが必要ない。点滴の中に膵島を浮遊させて、それを普通の点滴のように肝臓の中に針を刺して、15分から20分ぐらいで終了する。患者さんも手術を受けているという感じではないです。点滴でなされる治療法です」

体の中で膵島がうまく定着し、新たにインスリンの分泌が始まれば、長年続けてきたインスリン注射から解放される可能性もある治療法です。現在、千葉東病院や京都大学など、6つの施設で膵島移植を行うことができます。

患者と予備軍を合わせて、およそ1600万人に達する糖尿病。怖い病気ですが、症状の進行をくい止めるのも、そして悪化させるのも、自分自身の心掛け次第なのです。「病気の管理は自らが行う」という意識を忘れることなく、自分の体と向き合いましょう。

生活環境の変化で、多くの人々の健康を脅かす大敵となった糖尿病。「私は大丈夫」ではなく、まずは血糖値検査を。そして現在の暮らしを見直し、適度な運動と栄養を考えた食事など生活態度の改善につとめることです。「自らの健康は自らが管理」です。