『眠ったと思ったのに奇声をあげて飛び起き、興奮して泣き出すこともありました。「死ぬってどういうことなの?」と、聞いてくることもありました。宙がいなくなったことを懸命に理解しようとしているようでした。』
Qプラスリポートです。お聞きいただいたのは、大切な人を亡くした悲しみに向き合った子どもの言葉を綴った「グリーフブック」という本の一節です。今回、この第2弾が出版されることになり、この出版をきっかけに、初めて思いを語った女性がいました。
稲嶺雪奈さん「かわれるものなら変わりたいし本当にごめんなさいってしか思わなくて・・。マイナスの気持ちが自分を覆っていくんですよね。どこにもぶつけられない。」
稲嶺雪奈さん。5年前。長男の遙汰(はるた)ちゃんを病気で亡くしました。息子の病気や死は自分のせいではないか、5年間、遙汰ちゃんを亡くした悲しさを誰にも話をすることはありませんでした。そんな時、障害を持った子どもと家族を支援するNPO団体「ほほえみ」と出会います。
ほほえみ代表福峯静香さん「大切な人を亡くした時の喪失に対する悲嘆、悲しみ、嘆く気持ちのことをグリーフっていうんですけど、グリーフの中にある人に対してどのように接したらいいのかっていうことを一緒に考えていけたらなと思っています。」
「ほほえみ」は4年前に1冊の本を出版。大切な人を亡くした悲しみが子どもたちの言葉で語られました。そして今回の2冊目は、子どもを亡くした親5人の言葉がつづられます。
「遥汰ちゃんのことを話してみないか」グリーフブックへの誘いに、稲嶺さんは、少しでも同じ境遇の親たちへの助けになればと、その時の心情を話すことにしたのです。
稲嶺雪奈さん「子どもの闘病中の時にそういう状況に置かれているお母さんの情報とか、すごく情報が少ないと思うんですよ。私があの時求めていたもの、ほしいと思っていたからそういう情報源にちょっとでも助けられるんだったら・・・。」
そして、稲嶺さんは初めて口を開きました。
稲嶺雪奈さん「(息子が植物状態になり)なんも反応のない息子と向き合うんですけど、自分がやってしまった、罪みたいに思ってたんだと思います。」
息子に目をあけてほしいという思いで、人形を買ってきたこともありました。
稲嶺雪奈さん「人形かってきてみたりとか、悲しかったんですよ。何か起きもしない子に独りよがりなのかなと思ったり。」
この日は、稲嶺さんなど子どもを亡くした親から聞き取った内容の編集作業が行われていました。
グリーフブック制作者の会議の様子「悲しい苦しいっていうのがものすごくわかるし、何であんなしてあげられなかったんだろうとかそういう言葉が随所に出てくるわけ。」
話すことで、悲しみや罪悪感と向き合い、心の整理につながったと稲嶺さんは話しています。
稲嶺雪奈さん「(Q.初めて話してみてどうでしたか?)改めて話してみて私話せるんだなとか、その時の気持ちをちゃんとこうやって振り返って確認してたりとかはしてたんだなと。」
一颯ちゃんは、遙汰ちゃんが亡くなったあとに生まれました。
稲嶺雪奈さん「すごーい、お兄ちゃんみたい、かっこいい!どこに足おく?こっちにおいてみたら?」
遥汰ちゃんが生きた証を伝えたい。ありのままの自然な気持ちが言葉に現れます。
稲嶺雪奈さん「悲しんで泣いている自体がだめだっていう風に思っていたんですよ。だからなるべく早く悲しい感情を早く忘れよう忘れようっていう風に今まで思ってきたんですけど、ただ聞いてくれるっていう方がいて、はじめてこの気持ちは解消されていくので、どんどん話していいんだよって、泣いていいんだよって、こう伝えたいですかね。」
取材をして、何度も皆さんが口にしていた「ヘビーだけどタブーな話じゃない」という言葉が印象的でした。子どもを亡くした親もその周りの人もヘビーな話だと避けてしまいがちだということですが、まず身の回りに話し、自分を受け入れるということがグリーフの大きな意味に繋がると実感しました。
お母さんたちの思いが詰まった第2弾は、今年6月に発売される予定です。