マンゴーやゴーヤー、菊など沖縄産の農産物が全国的に評価される一方で、農業全体では今、大きな悩みを抱えています。基地問題や観光の問題などがクローズアップされる中、ともすれば印象が薄れがちな沖縄の農業は、今、後継者不足という深刻な課題に直面しています。
大城盛正さん「7年くらいになるんですけどね、前は運転手していたんですよ。要するに農業はやった分、収入が入るかなと思って」
大城盛正さん、44才。18年勤めた運転手をやめ、7年前に農業に転職。家族でインゲンとオクラを作っています。当初1000坪だった畑は2500坪にまで増え、運転手をしていた頃に比べ収入はおよそ2倍に増えました。
大城盛正さん「好きじゃないとできないですね。種植えから成長するまでみるから。成長するのが楽しみなんですよ」
耕作面積を増やし、経営に手ごたえを感じる一方で、大城さんは周りの農家が高齢化し、畑をやめる人が増える今の状況に危機感を抱いています。
大城盛正さん「年配の方はだんだん体力も落ちるし、辞めていく人たちもいる。辞めた分、あらたに作る人がいないと農業は下火になっていく」
農家が減れば、ライバルが減るというわけにはいきません。全体の生産量が減ることで、市場の要求に応えられなくなる可能性が出てきます。安定した出荷が農家の信用に繋がるため、協力し合う仲間が必要だといいます。
大城盛正さん「まず100箱注文して、市場の場合は品物が『明日もうないですよ』は通らない。農家はいつも出せる体制を作らないと、市場には評価が落ちる」「だから後継者も育てなければいけない」
親の代から34年間続いている親泊牧場。128頭の乳牛を育てています。
親泊清さん「朝は牛舎の作業は最初に掃除からやりますから、5時前には牛小屋の方には入らないと。搾乳は6時から」
2代目の親泊清さんは、9年前に勤めていた農協を辞めて酪農の仕事を継ぎました。きつい仕事だと若者が敬遠しがちな酪農ですが、おいしい牛乳を生産しているという誇りが親泊さんを支えています。しかし、このところの全国的な牛乳の消費量の減少に、若者の酪農への関心がさらに遠のくのではと不安を感じています。
親泊清さん「牛乳に対して、間違ったイメージを持っている。若い人たちから牛乳を飲むと太るという悪いイメージがあるというのを聞いたことがある」「ここ2、3年で20パーセントくらい(牛乳の消費が)減ったんじゃないかな。きついですね」
体にいいものを作っても、消費が伸び悩めば若者は農業を敬遠する。若者を農業に惹きつけるには、沖縄で生産した農産物を県内で消費する仕組みが必要だと強く感じています。今の状況のままでは、いずれ沖縄の農業は消えてしまうという不安があるのです。
親泊清さん「やっぱり農業があって、人も食が豊かになってくると思う。だから、日本から、沖縄から農業をなくしていっては輸入物に頼ってしまう」
県内の農業従事者の数は、この20年間におよそ半分に減っています。そして65歳以上の高齢者は去年は農家の半数を超えました。その一方で新たに農業に従事した新規就農者はここ10年の年平均が63人。後継者育成は解決が急がれる大きな課題なのです。
糸数慶子候補「サトウキビ+αで、新しい農業を果物や野菜に特化した状態で生産をしていく。沖縄の若い人に対する大きな支援策として展開していきたいと思っています」
仲井真弘多候補「(国・県・JA等で)いろいろな試みの最中だと思う。ですから、ここはちょっと知事にしていただいてからもう少し良くお話を伺って。農業というのは地域の基幹ですから、大事にしていきたいと思っております」
小さな規模の農家の多い沖縄の農業。放任耕作地やほかの産業との連携など、この産業には乗り越えなくてはいけないさまざまな課題があります。生活に直結したこの産業だからこそ、残りの選挙戦でこれらの課題への熱意を候補者は私達に伝えてほしいものです。