動かぬ基地です。東村高江に計画されているアメリカ軍の6つのヘリパッド建設は、先月2つが完成し、さらにもう2つの工事着工が迫っています。豊かな森を切り開くこの工事の内容をみてみると、環境への懸念が浮かび上がってきました。
豊かな自然と、希少な生き物たちが暮らす、東村高江。緑が眩しい季節を迎えた森には、穏やかな時間が流れています。
北上田さん「ここからがいわゆる米軍への提供施設ですね。。」
森の中に建てられた看板は、ここから先が、アメリカ軍への提供地であることを示しています。
北上田さん「希少生物が多いと思いますね。宇嘉川の源流というのは、ほとんど人が入っていないから。」
そう語るのは、高江のヘリパッド建設に反対し、毎週、那覇から高江に通っている北上田さんです。国が計画する6つのヘリパッドのうち、すでに2か所が完成。集落を取り囲むような、これらのヘリパッドでは、年間2500回を超えるオスプレイの訓練も見込まれています。
高江に暮らす男性「工事をしようとするところには、たくさん自然が残っているということ。もう作らせたらお終いですからね。」
「穏やかな生活を守りたい」「やんばるの自然を守りたい」と、高江の座り込みテントには、毎日、県内外から人々が駆け付け、残る4か所の工事を止めようと、24時間体制で座り込みが続けられています。さらに。
高江に住む男性「迷惑になるよな、そんなに音が大きいなと思って見たら、オスプレイが。」
高江小学校の男の子「飛んできたら、学校のガラスが揺れる。(Q.授業中でも?)がらがらがらって。」
高江では、日常的に訓練が繰り返され、人々の生活は不安の中にあります。そんな中、いま、新たな着陸帯N1地区の工事が迫っています。北上田さんは、30年以上、土木工事や設計の仕事に携わってきた経験から、この工事に大きな疑問を抱いています。
北上田さん「非常にずさんな内容のまま行われようとしている。」
これは、ことし5月、沖縄防衛局が、県の条例に基づいて提出したN1地区の工事に関して赤土の流出防止策をまとめた書類です。そこには、N1地区で計画されている直径75メートルのヘリパッドが2つ、そしてヘリパッドにつながる、長さおよそ2キロの道が記されていました。北上田さんは、その道には、工事で発生する赤土を溜めておく設備など、必要な処置がないと指摘します。
北上田さん「200メートルごとに(赤土を溜める)沈殿槽を作って、脇を全部土砂防止策で囲ってね、そういう対策をする必要があるのに、今回はなにもされていない。(赤土が)こちらに崩れたら、宇嘉川。こちらに崩れたら新川ダム。これは福地ダムまで行って、県民の水がめになっている場所ですね。どちらに土砂が崩落しても、被害は深刻になるんですけども。」
珊瑚礁や生物に大きな影響を与える赤土。なぜ道路に赤土対策がされていないのか沖縄防衛局に問い合わせたところ、「対策は、明らかに赤土が流出する可能性がある裸地のみ行い、仮に工事中に裸地が発生した場合には、砂利などをひいて対応する」と回答しました。
しかし、もし、この計画のまま工事が進めば、大量の赤土が川やダムに流れてしまう可能性が高いと、北上田さんは指摘します。さらに、工事車両が通る道は、幅がわずか3メートルと狭く、ところどころ、切り立った崖のようになっています。しかし、左右には転落防止の柵もありません。
北上田さん「防衛局が出したこの断面図でも、それこそ、90度に近いような崖になっている。その上に、土嚢を置いただけで、3mの道路にすると。こう言った状態のままダンプカーが行き来すれば、非常に危険。実際、工事現場で行われる対策が、このままでは済むはずがないので、もうこれ以上の裸地がたくさんできて、赤土の流出の恐れが非常に強いと心配しています。」
しかし、県は、これらの内容に問題はなく、協議の必要もないとして、先月、県は沖縄防衛局に対し、確認済の通知書を発行しました。やんばるの森にしか生息できない生き物たちへ深刻な影響を与えるのではないか。実際にはどんな工事が、どのような工程で行われようとしているのか。N1の工事は、いま、国がいつでも工事を開始できる状態に置かれています。
この県の赤土条例の目的は「対策」であって、工事を「制限」するものではないということ。法律によって県が自然を守ることができなければ、沖縄の宝であるやんばるの森を、どうやって守ることができるのでしょうか。