政府と県は普天間基地の移設を巡る協議を今年から本格化させ、辺野古での基地建設に向けた動きをいよいよ加速しようとしています。
しかし、今月3日には政府の閣僚が「日米政府が合意したV字型の2本の滑走路は、地元の理解が得やすいなら1本でもいい」と発言するなど、政府の内部でさえ、様々な意見の違いがあることが浮き彫りになってきています。年末から年始にかけての普天間移設に関わる動きをまとめました。岸本記者です。
普天間基地の名護市キャンプシュワブ沿岸部への移設について政府と地元が話し合う2回目の協議会。
仲井真知事「3年で閉鎖状態にするやり方というのは、防衛庁と米軍の専門家がよく話をしてもらわないと答えが出ないと思う」
自らの選挙公約を突きつけ、普天間の危険性除去を強く要求した仲井真知事ですが、政府は知事の公約を半ば聞き流し、新しい基地の完成を2014年から2011年へ前倒ししたいと、建設を急ぐ姿勢をはっきりと示します。
久間防衛庁長官(現大臣)「知事から3年以内という具体的な言葉は出なかった。建設工事が進み出すと、普天間の危険性の除去についていろいろな選択肢があるから、それについてはどういう方法があるか色々研究してみたいと」
その翌日。県庁を訪れたケビン・メア総領事もアメリカ軍の兵力を維持する立場から、知事の公約にはっきりと『NO』を突きつけます。
ケビン・メア総領事「閉鎖するということは不可能だと思います。何回も言いましたが、それは変わりません。我々の考え方は合意した計画を実行する時期で、交渉する時ではありません」
両政府の厚い壁の前に行き場を失ったようにも見える知事の公約。知事は地元を置き去りにV字型滑走路の建設を進めようとする政府に対し、計画の修正を求める考えを示します。
仲井真知事「やはり(滑走路を)海側に出して騒音とかですね、その辺が十分地元の納得いくところまで来ているかどうか」
地元の声を聞けという知事の発言に防衛庁の久間長官、現大臣は年明け、訪問中のタイで政府の閣僚としては初めて政府で合意したV字型の2本の滑走路案にこだわらない姿勢を示します。
久間防衛庁長官(現大臣)「滑走路は一本でもいい!沖縄県と名護市、またアメリカ政府の3者が合意する案なら何でもいい」
知事も柔軟姿勢を歓迎しますが、外務省と官邸はこの発言を否定にかかります。
麻生外務大臣「決まった話をまたひっくり返すことになる」
塩崎官房長官「政府としては昨年5月に日米で合意した案が基本だ。何も変わることはない」
そしておととい、普天間移設協議会の司会を務める鈴木内閣官房副長官は、普天間と辺野古を上空から視察。地元に対し、V字型案が基本だと改めて念を押しました。
鈴木内閣官房副長官「政府としての考えは全く変わっておりません。沖縄のみなさんと政府とよく相談して、一刻も早く移転すべきと感じました」
普天間の移設を急ぐという点では一致している仲井真知事と政府。しかし県が最も恐れるのは、頭越しの日米合意の時のような地元を無視した強引な政府の姿勢です。
政府と県は今月19日に3回目となる政府と地元の移設協議会を開催し、名護市はこの場で基地建設に伴う具体的な環境保全策について説明を求める考えです。一方、政府は最大限、地元の理解を得るために様々な振興策を提示してくると見られます。
また防衛庁もきょうから防衛省に格上げされ、これまで内閣府を通していた予算を政府に直接請求したり、国会への法案提出もできるようになり、久間大臣の姿勢にもどのような変化がでるのか注目が集まります。