先月18日、切実な思いで海に出た人たちがいました。「北限のジュゴン調査チーム・ザン」のメンバーです。
北限のジュゴン調査チーム・ザン鈴木雅子さん「今、一番大事なところが立ち入り制限区域になるという話で今できるだけデータ集めて、保全に生かすため」
仲井真知事の埋め立て承認を受け、加速する辺野古への基地建設。政府はきのう埋め立て予定の水域を含む周辺海域の立ち入りを禁止することを決定しました。しかしそこはジュゴンの餌場。鈴木さんたちは工事によって貴重な餌場が失われることを恐れているのです。
沖縄防衛局の環境影響評価書によると沖縄には少なくとも3頭のジュゴンがいることがわかっています。そして辺野古のこの海域では3年連続で、ジュゴンが食事をした後、食み跡が発見され、今年もすでに5月、6月と連続でジュゴンの食み跡が見つかっているのです。
嶺井カメラマン・ヘリリポート「キャンプシュワブの上空に来ています。親子連れで仲良くゆったりと泳いでいるのが確認されました」
防衛局は評価書の中で沖縄のジュゴンを個体A、個体B、個体Cと表現しています。このうちBとCは親子とみらえていて、鈴木さんは子どもだったCが成長し、餌場を求めて辺野古にやって来ているのではないかと考えているのです。
鈴木雅子さん「西側にいた親子のうち、個体C、防衛局がCと名付けたCちゃんが辺戸岬から嘉陽まで来ていることが、アセスの記録であったんですね。Cが成長して、新しい餌場を求めて、ここにきているのかなと」
この日の調査ではさっそく大きな成果が得られました。キャンプシュワブのビーチからおよそ50メートルの地点で1か月以内のものとみられる新しいジュゴンの食み跡がみつかったのです。
調査に参加したダイバーは「たくさんあって、やりきれない、どうしよう、すごい。かなりたくさん食み跡ありますね」「新しく食べに来ていた場所がわかりました。こちらに最近食べに来ているのがわかりました」
なかなかその姿を見ることはできませんが、確実にこの海に生きているジュゴン。彼らの足跡である食み跡を映像におさめようと私たちは改めて水中カメラマンの長田さんとともに海に出ました。
そしてとらえたのが。海底にはくっきりとジュゴンが餌を食べて泳ぎまわった跡が残されていたのです。
鈴木雅子さん「今、ジュゴンが少し静かになって帰ってきている。その海がまた、争いの海になって、ここにコンクリートの10メートルの高さの構造物ができるのは信じられない、あってはならないです」
辺野古の海で見つけたのはジュゴンの食み跡だけではありませんでした。長田さんの提案で、撮影したのは、沖縄でも珍しいトウアカクマノミ。その卵が孵化の時期を静かに待っていました。
長田さん「ここの環境がなくなってしまうことで、すみかがなくなる。やっぱりそういう現状を考えると寂しい。これからも、ぜひ潜ることができる環境、すなわち、基地が出来上がらない環境が残ったら、カメラマンとしては一番うれしいですね」
沖縄防衛局は新たな施設がジュゴンに与える影響について、最小限にとどめるよう十分配慮されていると評価。3頭のジュゴンが辺野古の海藻藻場を利用する可能性は小さいとしています。しかし今回食み跡が見つかったのは埋め立てが予定されている海です。
鈴木雅子さん「ジュゴンが生きているのが人々が安全な海で生活を営める環境があるから、そのことを思い返して、みんなで環境を守っていきたいと思いますね」
ジュゴンが泳ぐ海を守ることはジュゴンだけでなく人間のためでもある。ジュゴンの生きる海についてもう一度考えてみる時が来ています。