あすは旧暦の12月8日、ムーチーです。しかし今、ムーチーには欠かせないあるものに異変が起きているのです。この時期、市場で飛ぶように売れているものがあります。3日で大体1500枚くらい。昨日は100枚余り。お母さんたちが売っているのはムーチーには欠かせないサンニンです。
昔は風除けとしてどこの家の庭先にも植えられていた月桃。しかし今、サンニンが足りなくなるという事態が起きているのです。 サンニンだけでは食べていけないということで、片手間、他の品物を作りながら、サンニン葉を作っている農家さんが多くなっているようです。
79歳の大城静子さんもそんな農家の一人です。糸満市にある大城さんの畑。サンニンはというと、野菜畑の隅に、防風林として植えられています。
「防風林のために植えたのよ。こんな少し植えたのにね、2,3本植えただけなのに、広がっていくの。」
サンニンは単価が安く、儲けが少ないので、専業農家はほとんどありません。しかも生産者の多くが高齢者、商売っ気もなければ、計画的に出荷もしないので、市場に出される量も安定しないのです。
「これだけ栽培してはひき合わないんじゃないかと思います。1年に1度だけでは…。小遣い稼ぎねー、また孫に上げたり…」
そんなサンニンですが、この数年で、ビジネスの幅は広がっています。菓子だけでなく、化粧品や健康茶の原料としても活用されていて、農家と専属契約を結ぶ企業は増えています。また、ムーチーも店で買う家庭が多くなっているため注文が殺到。菓子店は、地縁血縁も利用して、サンニンを集めに必死です。
「そういう方たちがいないと、この仕事は到底無理じゃないですかね。私たちもお客さんに注文とることはできないんじゃないですかね。」「伝統行事、ムーチーのものですから、こちらで栽培を進めて、集荷販売するやり方をこれからも考えていく方が良いかと思っています。」
今年も市場にはたくさんのムーチーが並び、サンニンのいい香りを漂わせています。年に一度の小さな混乱ではありますが、サンニンをめぐる問題は沖縄のゆったりとした風土に守られてきた伝統行事を次の代にどうつなげていくかという未来への宿題でもあるのです。