知事の埋め立て承認後、政府が名護市辺野古への新基地建設への動きを加速させています。来月には新基地建設に向けた調査などが始まるとの見方もある中で、辺野古区では先週住民たちの大きな動きがありました。
辺野古の海でささげられるのは、この海を守ろうと闘い続け、志半ばで亡くなった仲間たちへの祈り。今月19日、辺野古の海で行われた海上抗議パレード。2004年に、基地建設に向けたボーリング調査を阻止しようと、住民たちが活動を始めてから10年となるのに合わせて、行われました。人々がおよそ20隻の漁船やカヌーで集結し、海からも浜からも「絶対に埋め立ては許さない」と抗議の声を上げました。
安次富浩さん「市民の声、沖縄全体の声を背景に、新しい基地は作らせないと。それはもう進めていきたいと」
参加者は「絶対に埋め立てられないように自分たちも色々学んで、自分たちの将来の事だから壊したくないと思いました」「力は弱いけど、非暴力で抵抗を続けたいなと思います」と話しました。
人々の顔に滲むのは、これまでにないほど強い危機感です。
仲井真知事「基準に適合していると判断し承認することと致しました。」
背景にあるのは、去年12月の知事の埋め立て承認。政府はこれ以降、移設工事に向けた業者を入札したり、作業ヤードとなる漁港の使用許可申請を出すなど、基地建設に向けた動きを加速させています。住民たちの危機感は別の形でも現れました。先週、沖縄防衛局を訪れた辺野古区の区長と区の最高決定機関である行政委員会のメンバーたち。
辺野古区嘉陽宗克区長「辺野古区は、このたびの沖縄県知事の埋め立て承認という新たな展開に鑑み、合意締結に向けた条件締結の作業を加速することが重要であると判断しました。」
基地の受け入れと引きかえの条件を提示したのです。辺野古区のこうした要請は今回が初めてではありません。これは2008年に政府などに対して出された要請書。新基地受け入れの条件として求めているのは、インフラの整備といった振興策や生活環境の悪化に対する補償金を支払うことなど、大きく12項目です。今回の要請は、この2008年の内容を概ね踏襲したもので、新たに辺野古区周辺のヘリパッドの撤去などが追加されているといいます。
辺野古区民の会西川征夫さん「いや知らされておりませんね。辺野古の区民の皆さんはほとんど知らなかったと思います。政府はですね、いつも言っているのは、県民の理解を求めるとか国の抑止力の為とか言うんですが、今まで当事者である辺野古区民に対して、政府は一度も理解を求めるような話はしておりません。それが非常に不快な思いでずっと来てるわけですよね。」
辺野古で17年間、新基地建設の反対運動を続ける西川征夫さん。今月新たに地元住民でつくる「辺野古区民の会」を立ち上げました。
西川征夫さん「辺野古には賛成する者だけでなく、我々みたいに反対する人もいるんだということをアピールしなくちゃならない。やっぱり辺野古区では賛否両論あったわけですね。というのは、やっぱり条件付けて受け入れる人たちといかなる条件でもダメだという我々がいるわけで、個人補償については、まったく私は政府が認めることはありえないと考えています。」
西川さんがこう話すのには理由があります。これは去年8月、政府から示された2008年の要請に対する回答書です。「再編交付金」や「環境整備法」の適用が可能なインフラ整備については、実現の可能性や検討する余地があるとしていますが、補償金をはじめほとんどの項目についての答えは、「今の法律では難しい」というものでした。
今回の要請についても沖縄防衛局の武田局長は「これまでも辺野古区の条件については、私どもとの間で様々な話い合いをさせていただいております。現在の状況を十分にふまえ、いかなる制度の下でどのように実現させていくのかについて、しっかりと検討させていただきたいと存じます」と話しました。
知事が埋め立てを承認した今、待ったなしとなった基地建設。どうしても基地がつくられてしまうならば、少しでも区民の暮らしを良くしてほしいという複雑な思い。一方で、何としてでもふるさとの海を埋め立てさせないという思いが交錯しています。
西川征夫さん「ただここで、辺野古の反対する者が区民がギブアップするわけにはいかないということで、我々は(基地が)来る来ないは、自分たちの目で確認する必要がある。この1年2年が勝負です」
政府の回答書が出されたのは去年の8月です。この時期は、政府が3月に名護漁協の埋め立て同意を取り付けたあと、そして知事の承認判断を前に県内の声に配慮していた時期です。
政府にとって最も重要な知事判断が出た今、果たして、辺野古区の思いは顧みられるのでしょうか。