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障害者自立支援法の施行以来、受けられるサービスの量が減らされたり、自己負担が重くのしかかったりと、全国各地で多くの問題が発生しています。そんな中、当事者の声を直に届ける事が大切だと、先日、全国の障害者団体が厚生労働省の前に集結しました。

国との話し合いにのぞんだのは30人の交渉団ですが、沖縄からは介護給付時間の見直しを求めて、沖縄県で初めて行政に対する不服申し立てを行った大城渉さんが参加し、現状を訴えました。

この日、厚生労働省の前に集まったのは、身体や精神・知的といった障害の種別を超えた人々、総勢300人です。この中に沖縄県で初めて介護給付時間の見直しを求め、県に不服審査請求を行った大城渉さんの姿もありました。

渉さん「この自立支援法が良いように改正されて、社会で住みやすくなってほしいです」

1人暮らしをする大城さんは進行性の筋ジストロフィーを抱えています。食事やトイレなどの介助に加え、夜間の就寝時には呼吸器の装着が欠かせないため、24時間の介助を必要としていますが、名護市から支給されていた介助時間は1日におよそ11時間。これでは生命の維持に危険が及ぶと、去年9月、沖縄県に対して見直しを求めました。

3回にわたる県の審査会では、就寝時の呼吸器の装着や寝返りの介助が欠かせない状況を認め、名護市から支給されている0.5時間では不十分であるとという判断がおりたのです。

岡島実弁護士「県が名護市の処分を、一部であるにせよ、誤りであると認めたことは大きな前進であった」

この決定のあと、去年暮れには改めて名護市との協議が行われました。就寝時に限らず、日中の介助者がつけられない空白の時間についてもその危険性を訴えます。

沖縄県自立生活センター・イルカ 長位鈴子さん「緊急通報が押せない、電話ができないものにとって、その2時間の間に何かあった時には名護市の方で責任を取ってくれるんですか?」

名護市側「県の算定を尊重します」

審査会の決定を受けても名護市の姿勢は頑なで、この日は期待するような回答は得られませんでした。

そして年明け、名護市が行った見直しは、夜間の就寝時間の介護を1日あたりたった0.5時間追加するというものでした。つまり、これまでの支給時間と合わせても1時間。8時間の睡眠時間をカバーできません。名護市の言い分は、2時間に1回の介助が標準とする医師の診断書に基づき、その1回分の介助にかかる20分、その3回分という単純計算による判断でした。

同じように終日介護を求める人に対し、このような介護給付が適正と言えるのか。適切な介護時間の支給を訴えるというのが、今回、国との交渉で渉さんに託された部分です。

渉さん「頑張ってしゃべりたいと思います」

この日は渉さんを含め30人の交渉団が、介護給付時間の問題や、障害者の自立に欠かせない外出を支援する事業の財源確保など、8つの施策について改善を求めました。

この中で、渉さんが就寝時の介護が1時間しか認められなかった現状を訴えると、厚労省からは一歩前進ともとれる発言がありました。

それは、重度の肢体不自由者で常時介護を必要とする人が受ける『重度訪問介護』の国の考え方に照らすと、趣旨からはずれるとして、誤った捉え方をしないよう沖縄県を初め、全国の自治体にも通達すると話したのです。

交渉の後、厚労省の担当者が沖縄県の福祉保健部に電話でその趣旨を説明し直す場面もありました。自立支援法はまだまだ理解・浸透が不十分なのです。書面での通達は近日中にも出される見通しです。

千葉県では、病院に入院する筋ジストロフィーの患者が夜間に人工呼吸器とマスクをつなぐ管が外れ、重体に陥った事故も発生しています。介護者不在で起きる不測の事態。起こってからでは遅いのです。

今、こうしている間も渉さんの病気は進行しています。貴重な時間を輝かせるために自立を目指して始めた1人暮らし。大切な日々が最低限の生活を獲得する手続きに追われて過ぎていきます。

渉さん「プレッシャーに感じる時もある。ここまできたので最後までやろうと思います」

法律の趣旨や運用についての不徹底や不勉強さで更に障害者に負担が及ぶというのはあってはなりません。渉さんは、来月12日、再度沖縄県に対して介護給付の見直しを求めた不服審査請求を行うことにしています。