先週金曜日から公開されている映画「ひめゆり」。この週末、多くの観客が桜坂劇場へと足を運びました。
戦場の記憶を人々に語るひめゆり学徒隊生存者の証言を淡々と記録したこのドキュメンタリー、生存者へ13年の間マイクを向けつづけた監督の思いを聞きました。
先週金曜日。劇場には早くから大勢の観客がつめかけ、観客の列は場外にまで及ぶほどでした。映画の出演者は、現在資料館で証言者をつとめる学徒隊の生存者。過酷な体験を後世につたえ、平和の尊さを訴えるために、戦後、語り始めた証言者の方々です。
監督の柴田昌平さん。「ひめゆり学徒隊」は映画・テレビにより美談や悲劇として様々なイメージにつくりあげられてきました。他者が作った「ひめゆり」に疑問をもった柴田さんは彼女たちに向き合い、13年間マイクを向け続けました。
柴田監督「“誰かが語ったひめゆり”ではなく、“ひめゆりの皆さんが語ったひめゆり”です。僕が語ったわけでなく、他者が語ったものでもない。僕はなるべく自分を消して、(ひめゆりの)皆さんが一番伝えたいメッセージを凝縮していく作業を手伝って」
映画を構成するのは当時の写真と映像、説明の字幕、そして生存者の語る証言。想像を絶する看護体験。目の前で友人が命を落とす。死にたいという気持ち、生き延びたいという気持ちとの葛藤を余儀なくされた10代の記憶。「伝えたい」という証言者の気持ちがスクリーンから溢れてきます。
柴田監督「“伝えよう”としてきたその途中にたまたま僕がいただけで。(ひめゆりの)皆さんの思いが先にあったということなんです」
映画の終了後、多くの観客が生存者に話しかけました。生存者はその人々の手をとり、かたく握り締めていました。この証言の記録を受け取った私たちが考えなければならないこと。柴田さんは生存者との対話を、映画をきっかけに若い世代に広げたいと考えています。
柴田監督「いろんな小さな質問に対しても、人生の先輩として色んな答えがかえってくる。今だったら直接対話が出来て、色んなことを自分なりに受け止められる、最後の時代だと思うんです」
辛い記憶に耐え、ずっと沈黙を守ってきた生存者の方々が平和への思いを込めて語りはじめた真実。この時代を生きる私たちが彼女たちの思いをどう受け止めるか、映画は静かに問いかけています。映画「ひめゆり」は来月6日まで、桜坂劇場で公開中です。