那覇市内のデパートできょうから始まった人形展「故郷からのおくりもの」。北信州ののどかな暮らしと人々の表情を、味わい深い人形で表現する高橋まゆみさんの作品展です。
通常の人形展とは少し異なり、町や野原など、ジオラマと呼ばれる舞台のなかで展示されている人形たち。まるでそこで生活しているかのような人形たちが、見る人の心に何かを語りかけてきます。
山あいのその駅には人の別れがあり、旅の一こまがあり。帰省していた孫を送るのでしょうか、おばあちゃんの姿も見えます。
春。村のなかを流れる小川のほとりでは、孫と連れ立って釣りをするおじいちゃん。そして土手では、おしゃべりしながら老夫婦がおむすびをほおばっています。
なつかしい日本の日々の暮らしの一こまを切り取り、詩情あふれる人々の姿を人形でえがく、高橋まゆみさんの作品展。会場には暮らしそのものを再現するジオラマがひろがり、見る人の心に、幼い頃の記憶をよみがえらせます。
『押し車 買い出しの友 連れ添って てこてこと行く 夕暮れの道』
いくつかの人形の傍らには、作家の高橋さんの思いが書き添えられています。
高橋まゆみさん「そういう言葉を読みながら、人形を見ながら懐かしんでもらったり、また自分の親やおじいちゃんおばあちゃんを思い出したりしながら、とにかく優しい気持ちになって帰ってもらえればいいなって」
会場の一角にある老夫婦の人形は、高橋さんが出会った実在の夫婦がモデルです。アルツハイマーの妻を10年以上介護する夫が、その思いを書き綴った本からこの作品は生まれました。
『いとおしく 痛く悲しき日々なれど 笑顔の妻にこころ和めり』
朝の体操や洗濯、明日の天気を願って作ったてるてる坊主。モデルとなっているのは北信州の暮らしですが、「家族の温かさ」や「ふるさとへの思い」という共通の大事なことを思い出してほしいと高橋さんは話しています。
高橋さん「身近にたくさん大事なものってあるんだよって、もう一度人形を通して確認してもらいたいんです」
高橋さんはいつか沖縄のおじいちゃんやおばあちゃんも描いてみたいと話していたそうです。心温まるような人形たちの世界は沖縄三越で、15日まで開かれています。