Qプラスリポートです。
きのうに続き、特定秘密保護法について考えます。現在、参院での質疑応答が行われていて、政府は今夜にでも、この法律を成立させる構えです。アメリカ軍基地ととなり合わせで暮らす私たちにとって、この法律はまったく他人事ではありません。むしろ暮らしに直接、影響してくることが考えられます。アメリカ軍基地の監視を続けるNGO団体の男性の姿を通し、この法律の問題をとらえます。
石破茂幹事長「何が秘密なのかを指定し、誰が取り扱って良いかを決め、そしてそれをしゃべったらどうなるかを定める。そういう法律はどの国も持っているものであります。」
今月1日、富山県で行われた後援会で自民党の石破幹事長は特定秘密保護法の正当性を強く訴えました。しかし、この講演の前の日、ブログでの発言が問題となっていました。国会周辺で法案反対を訴える市民の運動をテロと変わらないと発言していたのです。
石破幹事長「周りにいる人たちが本当に恐怖を感じるような大きな音で“絶対にこれを許さない”という形で訴える事が、本当に民主主義にとって正しい事なのだろうか。」
特定秘密保護法案には「テロリズムの防止」という文言があります。条文で、テロとは「政治上、その他の主義主張に基づき、国家、もしくは他人にこれを強要し、不安を与える者」と書かれています。市民運動を、テロになぞらえて表現したことで沖縄での基地反対運動にも影響が出る可能性があることが、明らかになりました。先月末、那覇市内で行われた法案反対を訴える市民集会には、沖縄密約を暴いた、元毎日新聞の記者、西山太吉さんが演壇にあがり国民による国家を監視する力の大切さを訴えました。
西山太吉演壇「国民の監視能力は低い、問題意識がない。そういったものは自然にメディアの取材力にも反映してくるんですよ。そうするとますます政府にとっては、自分達の情報管理、情報操作がしやすくなるんですよ。」
県内で基地の監視活動などを続けるNGO団体、沖縄県平和委の大久保康裕さん。
平和委員会大久保さん「世情を反映した訓練が身近に見える場所としては数少ないところなので、こういったところは常に注意を払っています。」
大久保さんは、これまで数多くのアメリカ軍の演習実態などを暴き、マスコミなどにも情報を公開してきました。この写真は2007年2月、宜野座村松田区の国道沿いで、アメリカ海兵隊員十数人が、草むらから市民の車両が走る国道に向け軽機関銃の銃口を向けて訓練をしている姿。
現場は、住宅地のすぐそば。議会でも問題となりました。ところで、基地の情報は沖縄県や、宜野湾市役所などでも公開されています。宜野湾市では、オスプレイの離着陸状況を目視し、その時間と、どの方向からの進入なのか確認し県とデータを共有。97年からは基地の騒音データもとり、基地に対する苦情があれば、ホームページで公開もしています。
しかし、そんな活動も、防衛、外交を理由に「特定秘密」に指定されれば、隣の基地で何が起きているのか、仮に基地の中で事故が発生しても、市民が知ることができなくなる可能性があるのです。基地の運用状況など、実態を知ることは、どれほど県民に必要な事なのでしょうか。
平和委員会大久保さん「あまりにも広い基地があるけれども、具体的に訓練に使われているのは、ほんのわずかであって、細切れではなく、一気に返還できる場所はまだまだあるんじゃないかということをこういう監視行動を通して知ることができたし、それを知ってもらいたいと思います。」
日米密約を暴き逮捕された経験を持つ西山太吉さんは、沖縄こそ秘密の標的にされる場所だと指摘します。
西山太吉「日米安全保障に関するアメリカと日本との関係運用の実態、こういうのを沖縄が一番知っていなければいけないことである、沖縄の人たちが一番知らなくちゃいけないことだけど、それが全部、特定秘密にされて、状態が分からなくなったときの恐ろしさというのはあなたたちはまだよくわかっていないんだよ。」
特定秘密保護法。大久保さんはこの法律の成立を急ぐ政府には別の思いがあると最後に語ってくれました。
沖縄県平和委員会大久保康裕さん「こういうような実態を知らせることによって、ますます国民は立ち上がりますから、そういうことを恐れている政府の表れでもあると思うんですが」
この法律の大きな問題は「防衛や外交」という広い網をかけたことです。識者からは「秘密を特定するはずが、不特定になるのではないか」「何が秘密になるのかよくわからない」という意見もある中、石破幹事長の、デモがテロであるかのような発言が飛び出すとさらに不安になります。
大久保さんは、特定秘密保護法は憲法で保障する国民の主権を奪うものになりかねないと警鐘をならし、今後、基地から派生する様々な問題を伝え続けることが難しくならないか、私たちの身近に影響が出るのではと、不安を訴えていました。