棚原様々な問題を積み残したまま、金曜日にも成立する見込みの「特定秘密保護法案」。最も影響を受けると言われる沖縄ですが何が問題なのか、今日明日二回に分けてお伝えします
三上「「特定秘密」とされるものを漏らす、または未遂でも罰せられるというこの法律。では何が特定秘密なのか、分類はこの4つです。・防衛・外交・テロ活動・特定有害活動、外国の利益を計る目的の安全脅威活動つまり「スパイ行為」ですね。そこで想起されるのが、沖縄戦で住民がスパイと疑われ殺されたスパイ虐殺です。今日は沖縄戦の事例からこの法律を考えます。」
今年1月。「オスプレイ配備撤回」を求めて上京した沖縄のリーダー達に、沿道から心ない罵声が飛交いました。なぜ「売国奴」なのか。「オスプレイに反対するのは中国の利益になる」。つまり外国の利益を計る行為=スパイに等しいという乱暴な解釈でした。国防に異議を唱えることが「特定有害活動」と言われかねない不穏な空気は既に拡がっています。
石原昌家「自衛隊を国防軍にするとか憲法を変えるとか、(そう言う事を堂々と政策に掲げながら安倍内閣というのは国民の7,8割の人に指示されているわけでしょう?)明らかにこれまでとは空気が変ってる訳ですよ」
沖縄戦の研究する石原教授は、今回の法案に強く反対する一人です。それは、沖縄の住民がスパイだと虐殺される根拠になった法律「軍機保護法」をなぞる内容だからです。
石原「軍機保護法を下敷きにしたと思われる秘密保護法が制定されようとしているのは沖縄にとっては本当に沖縄戦再来の前夜。」
「軍機保護法」。明治32年に交付された、軍の機密を犯す者を罰する法律で、日中戦争さなかの昭和12年に改正された時には「外国のために行動する者に漏洩したら死刑」と極刑になります。沖縄戦の住民虐殺の根拠になったのは、この改訂版です。
石原「軍民雑居で、陣地作りに総動員されていったということで、軍人同様軍事機密を知ってしまった。だから、敵に捕まる前に死んでもらう。」
「生きて虜囚の辱めを受けず」という精神論は表向きで、住民が捕虜になって機密が漏れるよりはスパイ容疑で処刑する」か、「自決」に追い込む。軍の機密を知る住民は不都合な存在とする「軍機保護法」が生んだ悲劇でした。スパイ虐殺が頻発した慶良間諸島では、住民がこんな自衛策をとっていました。
三上「暁部隊のマークですか?」
宮城晴美「そうそう。座間味の座の濁点を撮って「サ」としてある。これを芋版で造った。各家庭に人数分配ったんです。道を歩く時には、切って胸元とか袖に貼り付けて、私はスパイではありませんというものに使われたらしいんですね。」
暁部隊。特攻艇をもつ秘密部隊が駐留した座間味島は、島まるごと秘密基地でした。海をうろつけば島の漁師でも疑われかねないと、この印を着物に付けたのです
宮城「ちょっと、血がついているんですよ。集団自決でこの子、亡くなったんですよ。血の跡が。やっぱり洗えないというか。洗ったら申し訳ないような気がして。」
亡くなった子供の母親は、宮城さんの祖母です。祖父が、妻と3人の子供ののどを切りましたが、命を落としたのは11才の長男ひとりでした。
これは集団自決を生き延びた子供たち。暁部隊のマークを付けてスパイじゃないと証明しても、結局住民たちは我が子を手にかけ、機密を守るよう追込まれたのです。
宮城さんはさらに、住民が住民をスパイだと密告する暗黒社会に陥っていたことを重視します。
宮城「住民虐殺というのも、直接日本軍がもちろん手を下してたくさんの人を殺していますけれども、そこにまた住民が訴えたという、そういう風に訴えることによって、保身ですよね。自分の保身のためには誰かを裏切らなければいけないという。」
石原教授も、声高な秘密保護は監視社会を生むと警告しています。
石原「廻りからこの人はおかしい、変だなあと。そういうのは非国民になっていくわけですよ。それが軍に知れて非国民、スパイ視されて、殺されていく例というのが沖縄戦では幾通りもあった。この法律が制定されて稼働し始めたら、とたんに空気はがらっと変ってですね自由にものが言えない雰囲気。国家権力、官憲に目をつけられないようにと自発的な服従心が生まれてくることは100%間違いないですね。」
棚原「小さな島で、軍隊に協力したから当然機密を知っている。それが、敵がきたら「軍機密が漏れる」と殺される。軍隊の情報と隣り合わせに生きる恐怖を改めて感じますが「秘密を漏らすものは厳罰に処す」という軍機保護法が根底にあったんですね。」
三上「情報が隠され、報道が難しくなるなど問題は多いんですが特定秘密保護法は、その軍機保護法の復活であると言う視点これは沖縄にとって最も恐ろしい指摘です。」