シリーズでお送りしている「悲鳴をあげる土地」。3回目のきょうは、動物から検出された毒物についてです。今年7月、環境化学に関する学会で、基地周辺の小動物からPCBが検出されたという衝撃的な事実が明らかにされました。
檻の中でおびえたような表情でこちらを見つめる小さな動物。マングースです。およそ100年前、ハブやネズミを駆除するために沖縄本島に持ちこまれましたが、家畜や農作物への被害が増大し、現在は特定外来生物に指定されています。
このマングースの体内から、ダイオキシン類の一種、PCBが高濃度で検出されたことが報告されました。
名桜大学・田代豊教授「モノオルトPCBというものですがこのタイプのPCBが、他の地域の他の生物の試料とかあるいはやんばるの方で捕まえられたマングースの試料などに比べてですね、今回の試料がかなり高かったという風な結果が出ています。」
調査は、愛媛大学と名桜大学の共同で行われました。2008年に普天間基地や牧港補給地区の近くで採取されたマングース7匹の肝臓を調べたところ、全ての個体から毒性の強いダイオキシン類の一種、「モノオルトPCB」という物質が、脂肪1グラム当たり平均で310ナノグラム、最高で890ナノグラム検出されました。
田代豊教授「ほかの地域で猫とか犬とか狸とかですね、いろいろな野生生物の分析を、これもやはり愛媛大学のほうでいろいろされてるんですけれどもだいたいそれと比べて1ケタから2ケタぐらい高い濃度であり、沖縄本島北部のやんばるの方で得られたマングースと比べてもやはり1ケタ2ケタくらい高い濃度であったということです。」
報告書では、汚染源は不明としつつも、米軍基地やその周辺に、変圧器などPCBを使用した製品があり、それが汚染源となっている可能性を指摘していて、周辺住民に影響が及んでいる可能性もあるとしています。
田代豊教授「こういう物質は自然界に元々あるものではありませんので何らかの人為的な発生源というのが、今回の、分析したマングースの縄張りの中にあるということは示しているといえると思います。そうでなければ体内にどこからかPCBが入ってくるということはありませんので。」
東門美津子沖縄市長「ひょっとしたら、他にもあるかもしれないというところでですね、是非全般的な調査をさせていただきたいと」
今回ドラム缶が見つかった沖縄市はもちろん、今後土地が返還される予定の各自治体も返還前の調査など、様々な要望を出してはいますが、日米両政府の動きは鈍いままです。
松本哲治浦添市長「今回沖縄市の方で返還された跡地からですね、地下にドラム缶でですね非常に危険な液体とかが出てまいりましたので、これから返還が進む過程においてもですね、きちんと埋蔵物についての調査等も先んだってさせていただきたいというお願いを要請いたしました。」
そして仲井眞知事も、土地返還計画の進捗状況が分からないと、いら立ちを隠しません。
仲井眞知事「なかなかね、のれんに腕押し、馬耳東風とは言いませんがそれに近いイメージで、答えがないんですね。マスタープラン作るときは市町村とね、関係してる市町村とね、よく意見交換できる場も作った方がいいですよ、事前の立ち入りもできるようにした方がいいですよ、6項目出しても何の返事もありません。だからこれでは進んでいるのかいないのか分からんというのが多いんですよ。」
沖縄市で見つかったドラム缶、そしてマングース。どこが、何によって、どのくらい汚染されているのか、現状では、我々に知る術はありません。皮肉にも、生態系に害を与えるとされるこの小さな動物が、より有害な物質の存在する可能性を、我々に示してくれているのです。