オリバーストーン監督「私は戦争は終わっていないのだと確信しました。」
戦争はまだ終わっていない-。そんな衝撃的な感想を語ったのは映画界の巨匠オリバーストーン監督。ベトナム戦争に兵士として従軍した経験を持つ彼が今回初めて、その前線基地となっていた沖縄を訪ねました。
ストーン監督はベトナム戦争をテーマにした作品で2度のアカデミー監督賞に輝いています。極限状態で人間性を失い、醜く、残虐になっていく兵士たちの姿を生々しく描くことで戦争に正義はないということを社会に突きつけたのです。
シンポジウムでは沖縄戦当時、鉄血勤皇隊として戦場に送られた大田元県知事と壮絶な体験を語り合いました。
大田元県知事「摩文仁の戦場で同じ日本軍が同じ日本の兵隊を食べ物や水を奪うため、手りゅう弾で殺すのを見ていたわけです。プラトーンを見ていると、アメリカの兵士も殺すシーンが出て、戦争はそういうものだと。」
ストーン監督「戦争に駆り出された人のうち半分くらいは、自分の人間性を維持していました。しかしもう半分の人たちは、人間性を失って、人種差別をしたり、ベトナムの人たちを見下したりして、兵士でも民間人でも、みんな死んでしまえばよいという風になってしまうのです。」
この沖縄ツアーを企画したのはカナダ在住の乗松聡子さん。彼女は沖縄の現状を世界中の人たちに知ってもらおうと、英語で情報発信をしています。
乗松聡子さん「沖縄戦の教訓はありますよね、軍は人を守らないという。教科書でも沖縄戦の経験が曲げられて利用されている。そういう問題をもっと追究して、海外に発信していきたい。」
沖縄に到着したのは、沖縄国際大学にアメリカ軍ヘリが墜落して9年となった日。県民やマスコミの熱狂的な対応に最初は戸惑っていた様子でした。
乗松聡子さん「ヘリの墜落とか、基地被害、性被害、騒音公害と一つ一つ言われても、自分としてはどうしていいかわからないというのがあったみたいです。」
そんな監督の様子が変わったのは沖縄戦を学んだり、体験者と交流したりした後のことです。監督はその鋭い感性ですぐに沖縄の置かれたいびつな状況、矛盾に気づいたといいます。
稲嶺市長「有名な監督さん、先生なので会うのを楽しみにしていました。」
ストーン監督「辺野古に新しい基地を造らせないために、努力をしていることで、それを誇りに思っています。大変意思の強い方だと思います。」
座り込みが続けられる辺野古では住民から感謝の言葉も送られました。
住民「助けに来てくれてありがとうと言いたい。支援に来てくれてありがとうと言いたい。」
沖縄の人たちの強い思いを受けた監督。基地建設に反対し、稲嶺市長を支援する考えを明らかにしました。
ストーン監督「このような美しい地形を、これ以上壊して、基地を造る必要はありません。戦後68年経ち、冷戦も戦う必要がないのに、基地を造る理由はないのです。:私は稲嶺名護市長を、来年1月の市長選挙に向けて全面的に支援しますし、彼が勝つことを信じます。」
かつて醜い地上戦が展開され、その後もアメリカ軍の基地として戦争に加担させられた小さな島。今も広大な基地を押し付けられている状況を監督はこんな風に案じています。
ストーン監督「アメリカ軍の権力の大きさに驚きました。基地建設についても、兵士の移動についても、地域に対しても、その影響を及ぼそうとしている。中国の脅威論を言う日本人がいますが、それは非常に危険です。」