高校の歴史教科書の検定で、沖縄戦の集団自決に関し日本軍が関与したという記述を削除するよう審議会が指示をだした問題についてです。高まる県民の検定撤回の声を受けながらも、国は一向に検定内容を見直そうとしていません。これまでの動きを振り返ります。
教科書から沖縄戦の集団自決に関して、日本軍の関与を削除することは歴史の歪曲だと、今月9日に行われた国の教科書検定に抗議する県民大会。集団自決は、軍による否定できない事実であると、国の方針を厳しく糾弾しました。
瑞慶覧長方さん「いざという時には自分が決しなさいと、手榴弾を2個渡されました」
県民の抗議の声が高まるなか、各市町村の議会で撤回を求める意見書が相次いで採択され、議会期間中までに41市町村のほとんどで可決される見通しです。
自民党県連・伊波常洋政調会長「県議会あげて全会一致の方向で、意見書の採択に向けて努力していくという結論に達しました。」
6月定例会を間近に控えた14日、県議会の最大会派、自民党は議員総会でこれまで態度を明確にしていなかった、野党側が出した意見書の取り扱いをめぐり協議。一部議員から反対する声も出ましたが、「採択を見送れば県民の反発を招くおそれがある」と、意見書の可決を全会一致で取り組むことを決めました。
その翌日、沖縄戦の体験者や教職員らの要請団は上京。文部科学省に全国から寄せられたおよそ9万人分の署名を提出し、「元の文章に戻して欲しい」と沖縄の思いを直接訴えました。
要請団の代表「悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、到底容認できるものではありません」
一方、この日の沖縄の地元紙には、文部科学省の教科書調査官が検定調査審議会に対し、集団自決の表記に関して「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現である」と指摘していた文書の存在が報道されました。これまで「関与できないしくみになっていると」と関与には否定的なコメントしてきた文科省が、文書で圧力をかけ、削除に関わっていたことが明らかになりました。
この文書について伊吹文部大臣に沖縄の地元紙記者が尋ねると...
琉球大学・高嶋伸欣教授「検定官は文科省の官僚です。官僚が用意したもので検定意見はつくられているということが確認されたということですから、文部科学大臣があの中身に関しては一切関与してませんと繰り返し答弁していることは事実に反している」
歴史の実相を伝えるはずの教科書が国の方針で歪められようとしている今、削除に至るまでに文科省がどこまで関与していたのか、検定のあり方が問われています。
戦後62年が経過し、沖縄戦の真実を子どもたちに正確に伝えていくべき教科書が国の意向で変わってしまう。歴史の真実が歪められることに危険を感じます。国は関与しないと言いながら、その一方で削除を誘導するようなやり方は到底納得できず、文部科学省は十分説明する責任があるはずです。