辺野古への基地建設に向けた予定地海域の埋め立て申請が来月にも出されると見られている中、名護市では水面下で様々な動きが出ています。名護市の現状を取材しました。
稲嶺市長「基地問題では正念場になる厳しい局面も予想されますけれども、稲嶺市政のまとめにふさわしい仕上げの年にしたいと思っております」
今月4日、新年の挨拶でこう語った名護市の稲嶺市長。まさに名護市は今年、正念場を迎えています。2007年から始まった辺野古への基地建設に向けた環境アセスメント。去年末、当時の民主党政権は駆け込みで環境アセスメントの手続きを済ませ、辺野古への基地建設向けた動きを進めたのです。
桜井教授「もう権力の座から去ることが決まっている、責任を持てない、その民主党が出したということ自体が、これまた私は物すごく悪い事例。沖縄で反対しているにも関わらず、沖縄に押し付けようというのは、理不尽以外の何物でもないと思う」
次のステップは、政府が沖縄県に提出する辺野古沖の埋め立て申請。中でもポイントになるのが知事が埋め立てを許可するかどうか、判断材料とする地元・名護市長の意見です。名護市の議員たちは…。
東恩納市議「地元選出の議員は辺野古案に反対していますから、辺野古とはないと思います。それを曲げれば民意を失うと思いますから」
川野市議「改めて名護には基地はいらないという稲嶺市政の立場を一緒になって押していきたいと思います。
宮城市議「県民の思いというのが、必ずしも本音の部分が出て来なかったところもある。政府が言うことも致し方ないのではとの思いもします」
こうした中、名護市では様々な動きが見られます。去年10月、4年ぶりに開かれた辺野古大綱引き。そこには就任したばかりの武田防衛局長の姿が。基地建設に向けて地元の合意を取り付けたい防衛局と地元との交流は続いているのです。
また、オスプレイの配備に際してはこんな出来事も。配備を間近に控えた去年9月。岩国基地で実施されたオスプレイの体験搭乗には名護市議会議員も招かれていました。
志良堂市議「(Q:オスプレイは試乗しましたか?)はい。その件に関しては発言したら変な風にとらえられてしまうので、その辺は勘弁してほしいと思います」
宮城市議「私たちは議員の立場として、現場主義の形でどんなものなのかという確認のために乗ったということです」
名護市議会議員のうち、海にも陸にも新しい基地を造らせないと明言する稲嶺市長の与党は15人。野党は11人となっていて、埋め立てに反対の意見が多数になるとみられています。
しかし一方で国が県に埋め立て申請を出す際に同意を得なければならない漁協からはこんな意見も出されています。
古波蔵組合長「ただ私は漁業組合を預かっているので、組合はそうじゃないんですよ。普通には漁業できないんですよ、制限水域で。だから海人の皆さんはそんな漁業ができない海は早く埋めさせた方が良いというような考えを持っているのが多数です。恐らく大多数が賛成するんじゃないのか」
稲嶺市長「しっかり検証して対応していると思えない中で、仮にこれが埋め立ての申請になると、これは許される問題ではない。正念場というのが、すぐ後ろに迫っているという危機感はあります」
名護市にとっても、沖縄にとっても正念場の一年は始まっています。
埋め立て予定地の漁業権を持っている名護漁協と沖縄防衛局は今、交渉中だということですが、県内では名護市だけでなく仲井真知事も県議会も、そして去年の衆議院議員選挙で当選した議員も辺野古移設はノーだと言っています。
このまま交渉を続けて、一部の利権者だけから合意を取り付けても、それは再び対立の火種になってしまうのではないでしょうか。