さて、釘もボンドも使わない、海に易しい方法で、北谷の海にサンゴを植えている金城浩二さんの活動は度々お伝えしています。先日も人間力大賞を受賞したのが記憶に新しいですね。
その独自の手法は、「素焼きのピン」に株分けしたサンゴをまず固着させ、それを、海底の岩の穴に差し込んで、砂を回し入れて抜けなくするというもの。2003年から始めて、卵を持つまでに成長したものもありますがこれまで金城さんは産卵の瞬間には立ちあえていません。今年はどうだったんでしょうか、ご覧ください!
北谷町アラハビーチの沖。新しいシタゾネというポイントで金城さんはさらに進化した方法でサンゴを植え続けています。
「素焼きのピン」ではなく、石灰質で無数の穴がある人工の「ライヴロック」にサンゴを固着させ、それを海底に固定します。金城さん特製のライヴロックは削りやすく、自然の穴に合わせて形を整えるだけ。砂も必要もありません。最後に、へちまの繊維をつめてきつく固定。
また、サンゴを天敵から守るため、かごをかぶせます。ブダイやオニヒトデがやってきても、かじられる心配もありません。
地球上の酸素の7割は海から供給されています。太陽をうけて、酸素を生み出すさんご礁の役割は重要です。
北谷・浜川漁港の一角に「サンゴの養殖場」が完成しました。ここで北谷のサンゴをどんどん株分けし、販売もできるようになり、漁協の収入にもなります。北谷はどんどん進化しています。
座喜味さん「どこに行っても、そうじゃないかな?こっちが一番成果出してるんじゃないかな。すばらしい人がいるのに」
その金城さんにも、大きな進歩がありました!晴れて北谷の漁協の「准組合員」になり、船も持つようになったのです。先輩組合員に安く譲ってもらい、今操船の腕を磨いているところです。
5月。サンゴの産卵の時期が近づきました。今年こそ、その瞬間に立ち会いたい。連日通う日々が始まっています。
このカチハラというポイントは、最初からサンゴを植えてきた場所です。その浅瀬には、直径50センチを超えるまで成長したサンゴもちらほら。今年はこのあたりで産卵が見られそうです!さっそく、金城さん卵も確認しました。
金城さん「まだ白い。細い」「けっこういいかんじだよ。見たらびびっちゃうかもよ」
でも、植えたものがみな育っているわけではありません。これはもっとも順調に成長し、去年産卵までしたサンゴです。2004年に植えたこのトゲスギミドリイシは、絡まった海藻を取ったり天敵を駆除したりと手をかけ、直径20センチを超えるまでに成長、去年は卵も確認されたのです。しかし、海水の汚れの影響で、ほとんど窒息死しています。
金城さん、何を思ったのか、死んだサンゴを折り始めました。根元のほうの、少しだけ生きている部分を救おうと、壊死した枝を切り落としているのです。
「環境が変わってないのに、サンゴを植えても意味がない。」そんな批判の声が脳裏をかする瞬間です。
しかし、「サンゴの移植」に対する関心はここ数年、世界的に高まっています。国際学会でも金城さんの移植方法が紹介されすでに3000本も植えてきた実績が、説得力を持ち始めています。
雷雲が出ている夕方。海人たちは今夜は出港は無理と話しています。「もしもいくならさっと行ってすぐ帰ってくるか!」「やさしいなあ〜お前!」座喜味さんは、夜の海が不慣れな金城さんを心配しているのです。
一部のサンゴはきのう生んでしまったようです。また今年も産卵にたち会えないのかと、不安になる金城さん。様子を見に来た海蛇にうろたえながらも、観察を続けます。
そして6月19日。
「Q:どんなですか?」金城さん「一番目が、もう半分は出てきているかんじ。もう今日産むよ〜ってかんじ!」「嬉しいもう超嬉しい。だいぶ嬉しい」
ついに、小指ほどの大きさから育てたサンゴが卵を産むところを目の前で見られる。足掛け5年。待ちに待った瞬間です!みんなを呼ぶ金城さん。今にも産卵が始まりそうです。そして・・・・
10時半。立派に成長したコユビミドリイシサンゴが大きな卵を次々と放出し始めました。
金城さん「いろんな批判とかあったけど、いい気分だね」「相当産んでるでしょ、今年。植えたサンゴが。それが多分また広がるさ。それを考えたら今環境問題で」「身動きできないことばっかりだけど、でも」「なんか、どうにかなりそうな気がしてくるね」
人間力大賞グランプリ受賞後の金城さん「前例のないことに協力してくれる人は少なくて苦労しました」「でも息子は、金持ちの父ちゃんより、さんご礁を上等にする父ちゃんのほうがかっこいいと言ってくれました」「一生、サンゴを植え続けます、ありがとうございました!」