仲井真知事が観光客1000万人を目標に掲げ、観光産業は益々沖縄の経済振興の重要な柱となっていきますが、中でも今注目されているのが「エステ・スパ産業」です。
去年8月には沖縄のエステ・スパの競争力を高めていこうと、産・学・官一体となった琉球エステ・スパ研究会が発足し、新たな取り組みが始まっています。
年々増加を続ける観光入域客。沖縄県は10年を目途に、現在の550万人から1000万人まで、年間の入域客を増やしたい考えです。
そんな中、健康志向の高まりや癒しブームも手伝って、これからの観光産業を飛躍させる起爆剤として大きな期待が注がれるのが、沖縄のエステやスパ。今やリゾートホテルには欠かせない存在となっています。
大手出版社の旅雑誌やファッション誌もこぞって沖縄のエステ・スパ施設を特集。ここ数年、全国的にその注目度はグット高まってきています。
こちらのホテルでは、県内ではいち早くリゾートホテルでのくつろぎをテーマに、リラクゼーションサロンをオープン。ウコンや黒糖・海水やモズクなど、オキナワの天然素材を使用したコースメニューやテラスバスが人気を集め、オープンから5年でサロンの顧客数を2倍にまで増やしました。
ココガーデンリゾートオキナワ・伊集明美マネージャー「一度目は観光をされて、二度目、三度目はステイを楽しまれる。オキナワという癒しの島にお越しいただいて、それを求める。やはり、スパを体験することによって、リゾートステイの楽しみが更に増していくということで、絶対に不可欠なものだと思います」
「こちらデドックス効果のある薬草をお入れしております。お酒とお塩を使って行なわせて頂きます」
那覇市内にあるこちらのビジネスホテルも7月末には、最上階を女性フロアとしてあらため、客室を改装してエステルームを設けました。
シークァワーサーや島マース、ウコンなど、県産素材を使ったオリジナルメニューで沖縄らしさを前面に押し出しています。この他、体の内と外から綺麗になってもらおうと、健康を意識した食事とエステをセットにした商品も売り出し、新たなサービスを展開しています。
ロコイン沖縄・嘉手納豪総支配人「やはり健康や美、癒し。時代のトレンドでもあるし、リゾートホテルだけでなく、ビジネスホテルの場でもそれが求められているのかと思います」
今や、観光客がホテルを選ぶ際、エステ・スパの有無やサービス内容は重要な判断材料となってきているのです。
しかし、その一方で年間およそ60万人がホテルのエステ・スパの利用を希望するものの、供給が追いつかず、20%は断っている状況、消費者センターに寄せられるクレームなども多いため、安心・安全、かつ安定的に提供できるエステ・スパの構築が、今後の産業発展に欠かせない課題となっています。
こうした中、去年8月には、沖縄の健康長寿と観光リゾートを支える重要な産業として沖縄らしいエステ・スパの確立を図っていこうと「琉球エステ・スパ研究会」が発足しました。沖縄総合事務局経済産業部を主体に、エステ業界や大学の研究者など、産・学・官が一体となって取り組んでいこうというものです。
沖縄総合事務局経済産業部健康関連産業グループ・野原貞夫さん「今、観光客のニーズも従来の周遊型から個人・家族型という風なニーズに変わって来ている。癒し、保養、そういった分野のニーズが高まっているというところもありまして、そういうニーズに対応するためにこの産業を発展させていこうと」
去年の産業祭りでは、琉球エステ・スパ研究会もブースを設けました。普段、エステと縁の薄そうな方々にも沖縄の産業としてしっかりPRしようと行なったのがエステの実演コーナー。この方も興味深そうに見入っていました。
「エステ・スパ産業には国家資格等がありませんので、サービスや商材の品質にばらつきがあるとか、もしトラブルが発生することがあれば、沖縄のイメージ低下に、そういうリスクも指摘されているところでございます」
先月6日には、県内のエステ業界や観光業種など、200 人あまりが参加してセミナーが開かれました。
信頼性の高いサービスや品質の維持向上を図って行く為には、沖縄のエステ・スパ業界の統一した認識が不可欠だとして、8項目からなるガイドラインを打ち出しました。
プライバシーや安全性、衛生面への配慮、専門の教育を受けたスタッフの常駐。また沖縄産素材の使用、利用料金の明瞭化などが定められています。これらのガイドラインを浸透させた上で、琉球エステ・スパを1つのブランドとして確立させたいというのが最終的な目標です。
日本エステティック協会西日本地区委員・山川杉乃さん「健康と集客の2大要素を兼ね備えたスパ産業は、産業発展の起爆剤として大いに期待が出来ると思います。ここにしかないオリジナルと本物のサービスがあれば、必ずリピートしてくれると思います。それと同時に、そこに従事する人材の育成が今後の大きな課題だと思います」
今、動き出したばかりのあらたな取り組み。温暖な気候や長寿を生み出す健康素材、独特の文化や風土など、沖縄ならでは付加価値をうまく組み込むことで、沖縄のエステ・スパ産業は大きな可能性を秘めています。
観光客の消費単価が伸び悩んでいる現状がある中で、沖縄のエステ・スパが1つのブランドとして確立できれば、大きな呼び水にもなりますし、タイやシンガポールにも引けを取らないエステ先進地として、海外からの観光客の誘致にもつながりそうです。