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ランチタイム。街の人気の食堂は忙しく、また街頭にはボリューム感たっぷりの弁当が並びます。調査によると、沖縄の脂質摂取の割合は全国一。脂の多い肉や炒め物、揚げ物で油を使うことが多いためです。

また、都市部の那覇ではとくに外食をする人の割合が高く、いわゆる働き盛りの30代ではおよそ60%の男性が週に3回以上外食をするという報告も。その食生活の結果、40代に入ると男性のおよそ半数が肥満という、全国平均を大きく上回る数字が出ています。

この生活習慣の改善のため、去年から那覇市がスタートした「健康づくり協力店」の認証事業。この日の講習会で、市民の健康状況や基礎的な栄養知識について学んだのはレストランや弁当屋さんといった「外食」に携わるみなさん。

参加者「肥満に対する考え方を、いま一度お客様に向けていきたいなとメニュー作りに取り組んでいる。ちょうどいいきっかけと思いまして」「“ちょっと甘さを控えてほしい”とか、お客さんもそれなりに健康を気遣ってるのが分かる。ここでさらに美味しいものを提供できたらと思っています」

つまりこの事業、飲食店や弁当屋さんなどを対象に、ヘルシーメニューを出したり栄養成分表示を行う店を「那覇市の協力店」として認証し、支援するというもの。外食の多い那覇市ですから、その外食をきっかけに市民の健康意識を高めようというわけなんです。

那覇市健康推進課・仲里知子さん「ほぼ毎日利用する外食から少しずつ、健康に配慮した取り組みを取り入れてもらうことができれば、普段の食生活にも大きな改善がみられるのではないかと思います」

そしてこの事業の特長は、ヘルシーメニューを作ろうという店に外食アドバイザーを派遣すること。カロリーや塩分など、食材や調理法ごとの細かい計算を、栄養士など、派遣されたアドバイザーとともに行うわけです。

那覇市長田のお弁当やさん。商業地や大学にも近く、お昼にはたくさんのお客さんが訪れます。

店の代表、金城さんは去年からこの事業に参加し、新しい弁当作りに取り組んでいるひとりです。しかし、もともと本土出身の金城さん、沖縄風の弁当には馴染みがなかったといいます。

とりいち弁当・金城一子さん「ポークが好き、カツが好き、できたら油モノやこってりしたものが好きで、ゴハンの上にも乗せる。それが始まりだったんですけど」

いまでも売れ筋はカツやフライ、こってりした焼肉がゴハンの上まで乗っている沖縄弁当。金城さんはそれとは別にうす味で野菜の多い、魚中心の弁当も作っていましたが、実際にプロのアドバイザーから細かい指導を受けると、思ったより塩分やカロリー、脂肪分があることに気づきました。

金城さん「“塩分控えめだな”と思っていても、計算していただきますと、“あら、こんなに多いんだ”とか。自己満足に過ぎなかったんですね、いままで」

管理栄養士・仲尾次えりかさん「「なぜこの白いご飯からこれ(玄米)に変わったかというと、塩ゴマをふって梅干をのせただけで、かなり塩分が上がってたんです」

金城さん(このシャケは)塩ふってないんですよ。うすくちしょう油で色がつかないくらいに。(Q:焼くのは網で?)そうです、フライパンや油は使ってません」

肉体労働に従事する男性から家庭の主婦や学生まで。求めるカロリー量は違うし、買ってすぐ食べてくれなければ、食中毒も不安。コストや売り上げも考えると、ヘルシーメニューは店にとってなかなか難しいものです。

仲尾次さん「私が“こうやってみたら?”って提案しても“そういう弁当は買わないよ”って答えが多いんです。でも実際に栄養相談してると“(ヘルシー弁当は)売ってないのよね”という消費者の意見もあるんですよね」

店の努力によってうまれる様々なメニュー、またそれを選ぶことによって、市民の健康への意識を高めていく。健康づくりを真剣に考える店を増やしていくという取り組みは、まだ始まったばかりです。

金城さん「大げさではないんですけど、“人の命を預かっている”仕事だと思ってます。だから今までみたいな“弁当やー”じゃなくて“お弁当屋さん”ていわれるくらいになりたいですね」

確かに、こういうヘルシーメニューのある店が増えれば、健康を考える人たちを中心に需要は高いでしょうし、やはり脂っこいものが好き、という人の意識も少しづつ変わるでしょうね。外食が多いからこそ、外食で市民の健康意識を変える。まさに逆転の発想です。