先週の土曜日、教科書検定の撤回を求める県民大会が宜野湾市で開かれました。会場に入りきれないほど集まった11万人あまりの人達。その中には多くの住民を集団自決で亡くした座間味島の人達の姿もありました。
その日も島の朝は静かに明けました。この半年、心をかき乱されてきた島の人達にとって、きょうは特別な日です。
集団自決があったという記憶を抱える島の人間として、なんとしても検定内容を撤回させたいと、県民大会に参加するのです。
座間味村・仲村三雄村長「教育という立場から、事実が伝わらないような表現というのは絶対許したらいかん。上陸第一歩の土地として、最初に集団自決が起きた場所です。そういう事が風化されてはいけない」
船には村長や村の議員役場の職員の他、当時をよく知る人達も乗り込みました。
平田文雄さん「国がそういう風に教えて、生きて恥をさらすよりは死ねということを徹底的に仕込まれて・・・。その辺の責任は、自分らは高みの見物みたいに、軍が言ったの言わないの。もうこれが一番腹立たしい事です。真実を取り返すためには是非参加しようと思って」
中村武次郎さん「あれ(検定内容)聞いた時は怒るというかびっくりしたよ」
中村武次郎さんは自らも集団自決を体験し、その際、姉を亡くしています。
中村さん「姉はちょうど20歳。青年団だから、お母さんに上陸したから頼みよった。絞めてくれ、絞めてくれって。再三頼んで、お母さんがやっと絞めたんだよな」
戦後何十年も心の奥底にあった苦しい体験。今回の教科書検定に武次郎さんの心は大きく揺さぶられました。
中村さん「教科書からはずすという事で日本政府はやっているので、そうさせていけない」
なんとしても検定意見を撤回させたい。先乗りした島の人たちと合流し、会場に向かいます。
その頃会場周辺は・・・
実近記者「大会開始まであと1時間あまりとなりました。会場入り口では続々と参加者がつめかけています」
続々と人が集まり、会場は満杯に・・・。そして県民大会が始まった。
大会が始まっても、会場に向かう人の波は途切れない。
嶺井カメラマン「上空から見ていても、切れ目無く続々と人が集まってくる様子がわかります」
平田さん「こんなに人数もいっぱい集まったし、どうしても歪曲をはね返さなくちゃいけないと思っています。決意をしています。(Q:天候が厳しいですけれど?)そのくらいの事は戦争で苦労したものにとっては何でもありませんよ。この大会が成功さえすれば」
中村さん「素晴らしいと思う。こんなにしてね。自決のないところの市町村も来ているんじゃない?見てごらん、協力してね。成功させないといけないよ」
そして島の人達が見守る中、兄の家族4人を亡くした座間味の宮平春子さんの思いも読み上げられました。
宮平春子さん(宮里芳和さん代読)「盛秀さんは3人のわが子を抱きしめて、涙を流しながら『ごめんね、こんなに大きく育てて、軍の命令で亡くすというのは生まないほうが良かったのか。お父さんが一緒にいるからね』と語りかけていた」
読谷高校・津嘉山拡大さん、照屋奈津美さん「教科書から軍の関与を消さないで下さい。あの醜い戦争を美化しないでほしい。たとえ醜くても真実を知りたい、学びたい、そして伝えたい」
大会には11万6000人が参加。真実を取り戻すために参加すると言っていた平田さん。
平田さん「大成功で嬉しい気持ちです。(島に帰って)ここの会場の現状をまっすぐ伝えたいと思います」
そして集団自決で姉を亡くした中村さん。きょうの事を姉に報告するつもりです。
中村さん「ほっとした。代読で宮里さんが発表したんだがね。亡くなった方々にも報告して、姉なんかも喜ぶと思う。あなた方は死んではいるんだが、その代わり自分なんかが頑張ってきたよって」
会場からあふれる程の人々。それぞれが思いを抱えて参加した大会。愛する家族を手にかける苦しい体験を強いられた悲惨な戦争の記憶が消せないという証です。
県民大会の熱気はまさに政府への怒りと不信感そのものでした。次はこの県民の声を政府に直接突きつける要請行動に移ります。さらには国会議員による決議の動きもあり、政府の対応に注目したいと思います。