2012年4月から使用する公民教科書の採択を巡って決着がついていない八重山教科書問題について、石垣市内の公立学校に通う児童などの保護者らが、育鵬社版の教科書ではなく全教育委員で採決した東京書籍版の公民教科書を無償で供与するよう訴える裁判が、那覇地裁で始まりました。
原告側の代理人井口弁護士は、裁判前の集会で「違法なことが行政でまかり通っていることを、司法で明らかにする」と話しました。
東京書籍版の教科書を、無償で受けることができるとして石垣市などを相手に裁判に臨んだのは、石垣市内の公立学校に通う子を持つ母親たちです。
母親は「今現段階がもうすでに子供を巻き込んで未来の子供を脅かしている、そんな気がしていますので、(むしろ、きちんとした答えを出してほしい。)私たちが納得できる方向で、きちんと結論を出してほしいという思いで」と話しました。
保護者たち原告は、2011年8月23日に、育鵬社版の教科書が採択された八重山地区採択協議会での答申は、無償措置法にある、同一の教科書を採択するための「協議」になっていないと主張。8月の答申は無効で、東京書籍版を選んだ、9月8日の採択の方が有効だと訴えています。
一方の石垣市と与那国町は、東京書籍版を選んだ9月8日の協議はこれで教科書を一本化するという事前の合意のない「話し合い」に過ぎず、育鵬社版を選んだ採択協議会の協議が有効だと主張しています。
この裁判は、この8月と9月の、どちらの採択が有効かが争点です。8日開かれた、第1回口頭弁論では、原告の保護者が、「採択が市民に公開されず、不透明にすすめられている」と述べ、育鵬社版の採択理由が明らかにされないことに不信感を示しました。
一方、被告となっている石垣市は、児童らが、市内の公立中学で授業を受けるかどうかは確定しているとはいえないとして、また県は、採択や無償給付について法的権限がなく、被告になりえないとして、それぞれ却下を求めました。
次回の裁判は、3月21日に開かれる予定で、市側が、育鵬社版を選んだ8月23日の協議が有効とする根拠を準備します。