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八重山地区の公民教科書の採択を巡る問題で、これまで公表されていなかった協議会の会議録などが、11日から石垣市役所で市民に一般公開されています。

一般公開されたのは、八重山採択地区協議会が開いた協議会や役員会などの会議録、音声データ、そして教科書選定の答申文書と調査員の報告書の5つの資料です。

一般公開にあたって、石垣市教育委員会の玉津博克教育長は10日の会見で「3教育委員会が教科書採択が同一ものにならなかったので出せなかったが、市民などから公開を求める声が多く寄せられたため、メンバーと協議し、10月31日に公開を決めた」と経緯を説明しています。

一般公開は11日から11月30日まで、石垣市役所内の市政情報センターで閲覧できます。

記者解説 八重山教科書問題で保護者が提訴

八重山地区の公民教科書の採択を巡る問題で、おととい石垣市の保護者2人が、石垣市教育委員会を提訴しました。なぜ、このような事態になっているのか?取材をしている中村記者です。

中村記者「今回の訴訟は、自分たちの子どもが中学校で公民を習うときに無償給付される教科書は『東京書籍』であることを確認するものです。現状では、石垣市教育委員会は来年度以降『育鵬社』を使うことを決めていますが、保護者側は『東京書籍』であることを司法の場で確認するために起こしたものです」

保護者はなぜ、提訴に踏み切ったのでしょうか?

中村記者「今回の公民教科書は、来年度から4年間使用されます。その対象になるのは、現在の中学2年生から小学5年生の生徒や児童で、今回提訴したのはその保護者でした。訴状では『育鵬社』と決めた八重山採択地区協議会の協議は『教科書無償措置に関する法律』に明記されている協議になっていないと指摘。そして9月8日の八重山地区の全教育委員が集まった協議が有効だと主張しています」

石垣市教育委員会や文科省は9月8日の協議は無効だとしていますよ。今回の裁判の争点は、ここになる訳ですね?

中村記者「正に、そのことが裁判所でどのように判断されるかが、注目されるところになります。そして保護者がもう一つ提訴した理由にあげているのが『なぜ、育鵬社の教科書が選ばれたか?』今回は教科書の内容についてではなく、選定の方法や経緯が不透明であるということなんです。これについては、保護者が会見を開き、次のように話しています」

原告「なんでこうなるのか?どうしてこういう結論になるのかと、とても自分の中で疑問点がいっぱいありました。現段階がもうすでに子どもを巻き込んで、未来の子どもを脅かしている、そんな気がしていますので、むしろ、きちんとした答えを出してほしい。私たちが納得できる方向で、きちんと結論を出してほしいという思い」

これまでの、経過を見ていると、教科書を選んだ側からの説明はされていません。だから法廷の場で明らかにしようということでしょうか?

中村記者「そのとおりです。これまで、協議会のメンバーが公の場で『(答申された全ての)教科書を読めるわけがない』とか『読まなくていい』などの主旨の発言をしています。さらに、教科書を調べ、報告した学校の教師が推薦していなかった育鵬社の教科書を選んだことについても説明がされていません」

中村記者「きょうから石垣市で会議録などの一般公開が始まっていますが、玉津教育長はきのうの会見で、協議については『一所懸命やった』と正当性をあると主張しています。しかし、なぜ、育鵬社の教科書を選んだのか、選んだ側の各委員がその理由を書いた評価シートは、今回公開されていませでした。

保護者が知りたいとしている肝心の教科書を選んだ理由が、公開の対象から外されているんですね。

中村記者「はい。これでは、学校に子どもを預ける保護者が納得いかないとするのは、当然かもしれません」

今回の裁判の争点は、選定方法や経過を明らかにすることですから、きょう開示された会議録だけでは十分ではないと思います。

提訴に正面から答える義務が行政の側にはあるわけですから、全てを明らかにしなければ、玉津教育長の言う協議の正当性も明らかにはなりません。