池宮城紀夫弁護団長「頑張ってね。あなた方世代の声を大きくね」
きょうの裁判で最も注目を集めた高校生がいます。又吉姫香さんは原告団嘉手納支部を代表して意見陳述に立ちました。
又吉姫香さん「静かに生活を取り戻せるよう、証言台に立ちました。皆さん一緒に頑張りましょう」
3人に1人が原告に加わっている嘉手納町。姫香さんも両親、そして4人の妹たちとともに裁判に参加することにしました。お父さんの研次さんはこう語ります。
又吉研次さん「自分なんかの時代で変えられるんだったら価値があるかと。できることがあったらさせても良いかなと」
姫香さんが通う嘉手納高校。学校の上空を戦闘機やヘリコプターがひっきりなしに飛び交い、騒音で授業が中断されることも多々あります。彼女こうした日常を裁判で訴えることにしました。
姫香さん「授業中では、先生が説明している時に飛行機が飛んだら先生の話が止まり、爆音が去っていくのをひたすら待たないといけません。酷い時には一時間の授業の間に3,4回中断することもあります」「一番下の妹はまだ2歳なんですが、飛行機の音を聞いて、毎日怖いと言って耳をふさいで親のそばに走って逃げていきます」「飛行機の爆音じゃなくて、虫の音が響くくらいの静かな生活がしてみたいです」
嘉手納町は昨年度、深夜早朝の騒音が5320回と過去最多を記録しました。
姫香さんのお父さんの同級生で、自身も父親の代から2代にわたって訴訟に携わっている古謝さんはこう話します。
古謝斉さん「嘉手納町も若い人から年寄りまで、裁判で闘っていくぞという意気込み。全国にも県民に対しても頑張っているよというのを良い機会だと思って」「姫香の世代、俺なんかの世代、親父の世代、みんなで闘っていこうと思う」
一方で、こんな声も。
池原勲副支部長「こんな辛いことを3世代にわたって裁判しないといけないのはみじめなこと。本当は1代で終わってほしかった」「今度こそ止めないと、4次を起こすとなると、3世代、4世代どころか、嘉手納周辺の人は爆音を無くすために、代々闘わなければなくなる」
裁判を前に姫香さんはこう述べます。
姫香さん「飛行機とか飛ばすんだったら、もう少し、沖縄の人のことを考えてとばしてほしい」「この飛行機の煩わしさは、こちらに住んでいる人にしかわからないから」「いつも沖縄は見捨てられている感があるけど、もう少しわかってほしい」
原告側は今回の裁判で、日本政府の責任についても強く追及する構えです。これに司法がどう向き合うのか、裁判は再び始まりました。
では担当の山城記者に聞きます。今回の3次訴訟の訴えの特徴を教えて下さい。
山城記者「夜間・早朝の飛行差止めと損害賠償を求めていることはこれまでと同じです。2次訴訟ではアメリカ軍に夜間・早朝の飛行をさせるなという訴えでしたが、これに対して裁判所は、騒音を発生させているのはアメリカであって、日本がアメリカに対して行動を規制することはできない、航空機の飛行を差し止める権限はないという判断をしました。これを第三者行為論といいます」
山城記者「こちらは今回の訴状の一部なんですが、これまでの訴訟に共通のもので、アメリカをしてという部分、日本がアメリカに飛行させてはならないという意味で、これまで第三者行為論で退けられてきたところです。今回は、この下の文章を付け加えました。この『アメリカをして』をとって、日本にも責任があることを、明確に主張しました。たとえ、日本に航空機を差止める権限がないとしても、住民に被害を及ぼさないよう、国が何らかの対策を講じる必要があると、裁判所にもこれまでより踏み込んだ判決を求めています」
人数もこれまでより膨大ですよね。これにはどんな背景があるんでしょうか?
山城記者「今回原告となったのは、2万2058人とこれまででも最大で、損害賠償額も446億円あまりとなっています。この背景には、この裁判を大衆運動に発展させることによって、日米両政府により強いインパクトを与えようという狙いがあるとみられます。小規模の裁判より、裁判を大きくすることで政府が具体的な策を講じなければならないという圧力をかけたいというわけです」
どうやってこんなに原告が増えたのか?
山城記者「今回はアメリカ軍基地で働いている人や、何らかの形で関わっている人たちも参加しています。裁判の前には、原告団の中心メンバーが原告1人1人に面接をし、騒音被害について聞き取りをしたり、逆に被害状況を説明したりと参加する人たちの意識を高めていったという背景もあります」
山城記者「政府は負担軽減を何度も口にしますが、実際が伴っていない中で裁判所がどのような判断をするのかが注目されます」