名護市に拠点を置き、北部の救急ヘリとして活動を続け、私達の番組でも何度も伝えてきた民間ドクターヘリ「MESH」の問題についてお伝えします。
資金難から一度は運航休止に追い込まれながらも、2年前に県民を巻き込む支援運動によって運航を再開させた「MESH」。しかし、今月末「MESH」は再び資金難を理由に運航を休止します。「MESH」は今、運航再開とともにその存続さえも大きな危機に立っていますます。
県中部の浦添総合病院が運営する県の公的ドクターヘリ。今から3年前に、沖縄県初のドクターヘリとして誕生しました。
ヘリコプターに乗って、空から医者と看護師がかけつけ、その場で治療にあたることから「空飛ぶER=救急救命室」とも呼ばれ、患者の命を救うだけでなく、治療に素早く対応することから後遺症などが軽減されるとして注目を集め、2011年6月現在、全国23ヵ所に27機のドクターヘリが配備され、特に広大な地域を抱える北海道ではすでに3機のドクターヘリがあり、必要性が高く認識されています。
ところが、その必要性を訴え続けながら、活動を続けた名護市の民間ドクターヘリ「MESH」が今、再び運航の危機を迎えています。
2年前、多くの支援によって、およそ1年ぶりに運航を再開した「MESH」喜びに沸く式典で、MESHの代表・小浜理事は思いを語りました。
小濱医師「二度とこのような会を開くつもりはございません。そういう意味でもきょうはこれを最後にするためにも、皆様のご協力を是非ともお願いしたいと思います」
小濱医師「待ちに待ったヘリです」
運航を再開したものの、資金難は続きました。小浜医師らは北部へのヘリの重要性を説き、国や県などに何度も支援を呼びかけました。
しかし「MESH」の拠点病院が、ドクターヘリの事業委託に必要な条件である「救命救急センター」としての要件を満たしていないことなどから、県は2機目のドクターヘリの導入を検討するものの「MESH」には難色を示し、北部の各自治体も積極的な財政支援をする動きはありません。
ヘリの運航費だけで年間1億2000万円。常に財政難が「MESH」を苦しめていました。
しかし、一方で「救える命を救いたい」という「MESH」の理念を支援する民間企業も徐々に増え、年間約4000万円程の資金確保もできるまでになりました。ところが-。
小濱医師「この10月いっぱいで、いったんMESHの救急ヘリ事業は終了せざるを得ない状況となりました」
先月、小浜代表が「MESH」のヘリ事業をこの10月いっぱいで撤退すると表明しましたのです。
小濱医師「考えても仕方がない。ヘリを飛ばす金がないんだから。結局、やる気のある地域医療で貢献しようという人たちが来ても、その人達のバックアップをその地域はやらない。訴えているにも関わらず。それならやっぱり(人材は)去ってしまう。結果としては支援がないということは(MESHが)必要がないということに結びついてくる」
約5年にわたる「MESH」の活動が、思うように進展しないもどかしさや、苛立ちがありました…。
今年3月に起きた東日本大震災。救える命があれば、どこへでもいきたい。小浜医師の強い思いで「MESH」は3月30日から4月上旬までの13日間岩手県で支援活動を展開。いざという時に、機動性のあるヘリの重要性を再確認したと言います
しかし、皮肉にもこの震災によってMESHの募金も大きく減額。結果、資金難につながりました。
小浜代表の口から突然飛び出した「MESH」の事業終了。これを受け、先月中旬、緊急の理事会が開催されました。
小濱医師「これからの運営方針で少しお知らせしておかなければいけないことがあって、急きょ理事会を開催することになり、お集まり願った次第であります」
理事会では一人で結論を急ぐ小浜医師に対し、他の理事からは運航継続の可能性を模索できないかとの意見が集中。結局、理事会は10月の運休は仕方ないとした上で、運航再開に向けた方策を考えようということになりました。
渕辺美紀理事「やっぱり理事として極めてショックでした。いずれは自分の命に関わってくるということをわかっていただきたい」
比嘉ゑみ子理事「救える命を救いたいという理念が、どれだけの多くの人を賛同させたか。続けるということが(その人たちへの)恩返しになると思う」
10月いっぱいで2度目の運休に追い込まれる民間ドクターヘリ「MESH」。北部の救急医療の救世主の翼は再度復活できるのか、揺れています。
メッシュサポートの理事会としては、早めに方策を立てて、来年早々にも運航を再開させたいという考えですが、「MESH」の視界は決して良好ではありません。
ドクターヘリ化の条件にもあがる「救命救急センター」は、人口30万人に対し一つという設置条件もあって、北部12万人の人口ではそもそも無理がある話です。
また「MESH」の問題は、単にヘリがなくなるというだけではないと指摘する医療関係者もいます。「MESH」がなくなれば、ヘリによる救急医療に意欲を感じ、名護の病院に集まってきた医師や看護師らがその病院から去ってしまい、結果北部の医療崩壊に繋がってしてしまうのではという危険もこの問題ははらんでいます。以上、Qリポートでした。