※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

八重山地区の公民の教科書採択問題で、県教育長は16日午後に記者会見し、改めて八重山地区で統一した教科書を採択するよう求めました。

会見で大城教育長は、文部科学省が9月16日を報告期限としている来年度使用する中学校教科書の需要数を八重山地区の部分を除いた県全体の数を15日までに報告したと述べました。

そしていまだ、八重山地区で公民だけが統一した教科書に採択できなかったことについて「残念だ」と述べ、八重山地区の3つの教育委員会の教育長宛に速やかに採択し報告するよう求め「同一教科書が採択され次第、早急に報告するよう求めているところ」と話しました。

県教育長は教科書採択が速やかに行えるよう、今後も助言を続けたいとしています。

記者解説 混迷深める教科書採択問題

では取材にあたっている中村記者に聞きます。大城教育長の教科書の選定をやり直すように言っているのでしょうか?

中村記者「そうではないと思います。八重山地区では先月23日の採択地区協議会で、育鵬社の教科書が選ばれましたが、竹富町などが、選ばれるプロセスに疑問があるとしてやり直すことになり、東京書籍が決まった経緯があります。ところが、これを不満とする石垣市の玉津教育長などが反発し混乱していました。県の教育委員会としては、とにかくもう一度地区で話し合いを持って、解決の方法を見つけてほしいというのが現状です」

それぞれの地区の教育長に話を聞きました。

竹富町・慶田盛教育長「現段階では、一本化ということは非常に厳しいということしか申し上げられません」

石垣市・玉津教育長「協議会の答申は生きているということで、文科省のほうからお墨付きをいただいておりますから、これに合わせる努力を、合っていない教育委員会がやるべきだと思います」

両者の意見は平行線ですね。もう少し踏み込んだ指導はできないのですか。

中村記者「県教育委員会も早く解決してもらいたいと考えていますが、踏み込みすぎると『不当加入』だということで、批判を招きかねないということも心配しています」

実際、この間にも様々な動きがありますので、まとめました。

——————————————-

石垣市・玉津教育長「これは名前を伏せますが、ある方から情報が入っています」

八重山地区の教育委員が勢ぞろいした8日の会合。この席で石垣市の玉津教育長はある資料を示しました。「教科書採択における文部科学省との確認事項」。それは「育鵬社」の教科書を選んだ最初の答申の正当性を主張するもの、教育委員会の助言、指導のもと、教科書選びをやり直すことに反発するものでした。その文書を送った人物とは。

自民党の義家弘介参議院議員。ヤンキー先生としても知られる人物です。教科書問題にも深く関わっています。

1997年、自民党の安倍晋三元総理などが結成した「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」。日本軍の加害責任が教科書に載ることを疑問視し中学校の教科書から「従軍慰安婦」という言葉が消える流れをつくりました。

育鵬社の教科書の普及を支援する「日本教育再生機構」という組織のホームページには、議員の会が2月、新しい歴史教科書をつくる会の元会長で教育再生機構の理事長である八木秀次理事長を招き、講演会を開いたことが紹介されています。

子どもと教科書全国ネット21・俵義文さん「これまでの教育を自虐史観で偏向した教育だと攻撃して、日本軍慰安婦や南京虐殺を教科書からなくなそうと活動している」

石垣市・玉津教育長「きょうこうして自民党の文教部会、それから日本の前途と歴史教育を考える議員の会ということで呼んでいただきまして、こういう発言の場を持っていただいたことを本当に心から喜んでおります」

今月13日、日本の前途と歴史教育を考える議員の会などが開いた会合に招かれた玉津教育長。教科書選定作業をやり直した結果、育鵬社の教科書が選ばれなかったことについて住民グループの動きや竹富町を批判しました。

石垣市・玉津教育長「元教育長たちが10名揃いまして、住民を名乗ってですね、住民の会ということで、あれこれといちゃもんをつけながら、規約の一言一句を修正しながら、やって来たということも事実」

この席には県教育委員会の狩俣義務教育課長も出席。県の立場や協議会の役割を説明しましたが受け入れられず、県教育委員会の対応が批判される事態となりました。

——————————————-

一連の経緯をまとめましたが、これだけ国会議員がかかわると、県教育委員会もやりづらいですよね。9月8日に行われた再協議では育鵬社が否決され、東京書籍が選ばれました。県教育委員会はこれをどう考えているんですか。

中村記者「実は県としては9月8日に決まったことを否定はしていません。県教育委員会のきょう次のように述べました」

県教育委員会・大城浩教育長「オブザーバーとして参加した義務教育課の職員によりますと、協議の場としては成立していると。そういったことがとりますので、その場の採決の状況としましては、有効であるという捉え方をしています」

中村記者「この発言はすごく重要です。県教委はつまり9月8日の決定は有効で、適切なルールに基づいたものだといっているんです。ですから、今後、9月8日に決まった東京書籍にするという考え方もあります。今後は、これまでの過程を見直した上で、2回目の決定がそのまま通せるかどうかが鍵になると思います」