実に40年近くにわたり、海の境界を巡って争っている自治体があります。那覇市と豊見城市です。なかなか決着がつかなかった両市の争いですが、実は最近になってともに新たな動きがありました。草柳記者です。
記憶にも新しい、尖閣諸島をめぐる領海争い。国土の問題となると注目を集めますが、実は、ここ沖縄で自治体同士が海の境界を争っているのをご存知でしょうか。
事の発端は、今から38年前の1973年、国土地理院が那覇市と当時の豊見城村に境界線の位置を確認したことに始まります。
豊見城村は当時の地図の通りと回答しますが、那覇市は戦前の漁業権の線を主張し争いとなりました。
豊見城市・外間弘健総務部長「もともと瀬長島と那覇空港の間に境界線がしっかりあったと考えている」
那覇市・渡慶次克彦企画財務部長「我々としては、戦前から漁業権の境が境界線であると主張している」
その後、両市の協議は膠着状態になりますが、ちょうど10年前、アメリカである古文書が見つかりました。「琉球国惣絵図」、18世紀に作成された絵地図で、当時の行政区画を示すとされているものです。そこには、那覇市の主張する漁業権とほぼ同じ線、海方切(うみほうぎり)が記されていました。
那覇市・渡慶次企画財務部長「我々としては歴史的史実に基づいた根拠ははっきりしている自信はある。歴史的に見ても非常に長い間、そういったものが海方切のラインで認められてますので、我々としてはこの方向で認めていただけるのではないか」
豊見城市・外間総務部長「漁業権は不変、いつまでも変わらずというものではない。歴史とともに変わってきた。この海方切をもって境界線だというのはちょっと疑問があると訴えている」
その後も那覇市は200年以上前の海方切を武器にこのような境界線を主張、一方、豊見城市は陸地間を結んだ等距離線が公平だと主張していて、ともに譲りません。
ところが今年になって、那覇市、豊見城市双方が、先月の議会で県に調停を求めることを議決。早速、手続きに入りました。
県市町村課・宮里健行政班長「自治紛争処理委員会を任命して調停に付するか、あるいは調停に適さないと県が判断した場合には、両市に通知をするということになります」
草柳記者「40年間に渡って両者一歩も引くことがなかった領海争い、ここにきて決着を図ろうとする理由は実はこの沖合にありました」
実は、両市の主張する線の延長上には那覇空港の新滑走路建設が予定されていて、将来、その面積に応じて国から交付金が支給されることになっています。億単位に上る交付金は、線引きによって数千万円の幅で増減することになるのです。
市民「空港とかって沖縄全体で考えていけば、隣接する市町村がそういうことで争うというのはあまりピンとこない感じがします」「初めて知りました。僕豊見城に住んでますけど、知らない」「できれば財源は豊見城に頂きたい部分はありますけど、どうなんだろう、難しいですね」「海は別にみんなのものでいいんじゃないか、境界なんかなくてもいいんじゃないか」
市民は事態を冷静に見つめているようですが、行政機関としては長年の懸案事項を何とか解決するチャンスでもあり、背水の陣で今回の調停に臨んでいます。
那覇市・渡慶次企画財務部長「我々としては海方切の線が境界ということですので、県が調停になじまないとか、そういう結論が出た場合には、残念ですけど裁判でという流れになっていくのではないか」
豊見城市・外間総務部長「再度、県知事への裁定、あるいは裁判という事務手順が想定される。市長はじめ関係部局と調整、検討を重ねたうえで、粛々と本市の主張を貫いていく」
県市町村課・宮里行政班長「埋立前にできるだけ速やかに確定させるということで手続きが行われていると考えておりますので、県としても適切に対応していきたいと考えています」
40年来の懸案解決に向けて調停が始まるのかどうか。県の判断は6月中旬にも示されることになっています。