おととしの夏、進行性の難病と闘う埼玉県在住の女性が、車いすで沖縄本島1周をしたことお伝えしました。その女性が先月県内の小学校で講演を行いました。彼女が伝えたいことは、夢をあきらめないこと。彼女の言葉を聞いた児童たちが、彼女を紹介する新聞の作成に挑んでいます。
糸満市立光洋小学校の5年生7人が頭を悩ませるのは、県内の新聞社が発行する子ども新聞の制作です。各学校での出来事を子ども達自身が記者となって紹介するこの新聞。子ども達には伝えたい思いがありました。
稲嶺明香利さん「沖縄の人みんなに文先生のすごさを伝えたいです」
子ども達と田中文さんとの出会いは先月18日。田中さんは関節や筋肉が次第に固まり、身体の自由を奪っていく進行性の難病「固定ジストニア」と闘いながら、全国で講演活動を続けています。自称「大空先生」。名前の由来はこんな考えから生まれました。
田中さん「悩んだときは1人じゃないんだよってことを覚えておいてください。この空を見上げてみてください。必ず答えが返ってくるような気がする。そうするとこんな顔になれます、笑顔になれるんだって」
田中さん「空があること忘れていた。だから空の写真を撮ることが多くなったのかなって思うし」
スポーツ指導者を目指していた学生時代のけがが原因で、田中さんは固定ジストニアを発症しました。それでも2年前には、左足だけで車いすを動かし、1ヶ月をかけて沖縄本島一周に挑戦。
田中さん「一歩一歩進むんだってそういうところ、途中で立ち止まるんじゃなくて前に進むんだって。いろんな人に前向きに生きてほしいから、私だけではなく」
田中さんの病状はおととしの夏より進行しています。
田中さん「体力的にもそうだけど、もうトレーニングするのは難しい」
腕は次第に細くなり、指のこう着は進んできました。タイヤを触れる親指はぼろぼろです。
田中さん「ゴールは夢の始まり、次の夢ができました」
田中さんの次の夢は沖縄本島1周の走行距離510キロにちなんで、510ヶ所で講演を行うこと。
田中さん「皆さんに車いすに乗ってもらいたいなって思う。ただ不便だけ、みんなと同じです。だから障害を持っていても健康でも同じこと、そして同じ心があります」
男子児童「(車いすの操作は)とても難しくて、青空先生が・・・大空先生です(笑)。大空先生が沖縄1周したのがすごいと思いました」
子どもたちは、田中さんの思いをどのように伝えるのでしょうか?
「必ず笑顔に」「必ず笑顔になれるから」
田中さんの思いは伝わっていました。学校の先生になることが夢の稲嶺明香利さん。印象に残ったのは「空」という文字。誰にでも悩みはある、それを乗り越えてこそ笑顔になれると田中さんの思いを説明しました。
稲嶺明香利さん「これからいろんな壁にあたっても思い出して、一歩一歩踏み出していきたいと思います。文先生のパワーは一生の宝物になると思います」
7人の中で一番頭を悩ませていたのは、将来は漫画関係の仕事につきたい比嘉ことねさん。「文先生らしく、おもしろくも夢に向かって努力する大切さをおしえてくれた」田中さんが明るく教えてくれた夢に向かって努力することの大切さを伝えました。
比嘉ことねさん「悩んでも出来上がって、このうれしさを実感しました」
最後は、新聞にのせる写真撮影。その表情は充実感に溢れていました。
比嘉ことねさん「夢に向かって努力することは1番大切だと思います」
病と闘いながら講演活動を続ける田中さんの思いが子どもたちの心を打ったんでしょう。子どもたちのきらきらした表情が印象的でした。光洋小の児童が書いた子ども新聞は来月上旬発行されるということです。