多くの離島や過疎地域を抱える沖縄県にとって、病気や事故にあった場合、病院にいち早く搬送する手段が整っていないことが大きな障害になっています。
そこできょうは、年内にも沖縄に配備されることが決まったヘリコプターを使った患者搬送、いわゆるドクターヘリの導入を前に、命に向かいあっている二つの民間病院の様子をお伝えします。
読谷村にあるヘリ基地から緊急要請を受けて飛び立つヘリ。機内に医者と看護師が乗り込むことで、現場でいち早い処置が行える。
今から3年前の2005年に浦添総合病院が始めた民間による救急搬送ヘリ、通称「U-PITS」の様子だ。
浦添総合病院・斉藤学救急総合診療部長「地域住民、あるいは離島の方々が困っている。だからヘリを導入するんだ」
沖縄県の面積は南北に約400キロ、東西に約1000キロ。広い海域を含み、その広さは九州、四国、本州を合わせた半分にもなる。この広大な地域に住む人々の命を守るためには、空から救急患者を搬送する手段は必要不可欠なのだ。
そこで、浦添総合病院が国や県に先駆けて独自でヘリ事業をスタート。このままでは「救える命も救えない」という現場の苦渋の思いからの決断でもあった。
スタートから今月までに475件の出動要請を受け、その9割近くの要請は離島からだ。
小浜先生「(ドクターヘリ)1機で賄える状況だと思う?無理、歴然としている。やっている我々が一番わかりますよ。南部に一つ、北部に一つ不可欠ですよ」
去年6月、名護の北部地区医師会病院が救急ヘリ事業をスタートさせた。
「救える命を救いたい」救急部長の小浜正博医師の熱い思いが2機目の民間ドクターヘリ「MESH」誕生につながった。
小浜正博医師「U-PITSさんの残波とか牧港の位置にヘリを置いて、そこから北部への活動をした場合、間に合わない。15分で医者がその場に行って処置を始めて、15分で戻ってきて病院に収容して、検査なり治療を始めるわけです。名護で始めるからこそ北部地域でヘリが生きてくるんです」
MESHは恩納村の以北、離島は伊是名・伊平屋を含む北部全域をカバーする。スタートからの出動要請は147件。出動要請のほとんどは、これまで搬送に1時間半以上もかかった国頭地域が突出している。
国頭地区消防本部・大城邦彦救急係長 「国頭にとってはこの2年程、何名かの人が助かっている事例が出ている。事故があったときに救急車、消防隊員だけでは対応出来ない限界に来ているということで」
飛行エリアを比べて見るとU-PITSの場合、離島を大きくカバーすることを目的に、片道30分約100キロ圏内で活動し、エリアは広い。
それに比べ、MESHはドクターヘリが最も活躍するとされる片道15分のエリアで、北部全域をカバーする。
これら民間病院の努力や社会の声を背景に、これまでドクターヘリ導入に足踏みをしていた県も、去年、国がドクターヘリ確保の特措法を制定したことで、20年度の予算に事業を盛り込んだ。
しかし、ドクターヘリ事業は救命救急センターにしか委託されないという条件がついていて、医師会病院はそれを満たしていないことから、今回の予算付けが難しい情勢だ。
小浜正博医師「でも我々は、この北部からMESH事業を撤退するわけにはいかない。もう認知され出しているわけですよ、北部の特に国頭、東、大宜味村の方にとってはMESHというのは必要不可欠になってきているわけです」
医師会病院は、救急ヘリ存続を求める6万4千人の署名を県に提出し、今後も公的なバックアップの必要性を訴えた。
小浜正博医師「ここでとにかく踏ん張って、この救急ヘリ事業を残しておかないと、この北部のこれから生きる子ども達や子孫に対して申し訳ない」
ドクターヘリの委託先は26日の県議会最終本会議で予算が可決されれば、県内にある3つの救命救急センターのうちの一つへ委託され、早ければ12月には飛び立つ予定です。
配備は吉報ですが、沖縄はこれだけ広いエリアがあるわけです。今年ドクターヘリが導入されても、先島や八重山、大東島などの離島はその恩恵にあずかれず、置いてきぼりという感は強く残ります。「救える命を救う」ためには、ヘリは1機では不十分なのです。