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ここからは早わかりビズです。りゅうぎん総研の研究員にお越しいただいて、県経済の動きをわかりやすく解説いたします。きょうの担当は宮国英理子(みやくに えりこ)さんです。よろしくお願いします。

テーマは「ホテル施設調査からみた持続可能な観光へ向けた取り組み」についてです。文字通り沖縄のリーディング産業について正面から取り組まれたわけですね。

宮国英理子研究員「今回は県内のホテル施設の調査を通して、現状の確認をしました。また、需給バランスをみて、その課題と沖縄観光がこれからも持続的に発展していくために、どうするべきかを考えてみました。」

県内のホテルの需要と供給のバランスがとれているかどうかが、持続可能な観光のための大切な要素ということが言えますか?

宮国英理子研究員「はい。コロナ禍を経験した私たちは「自由に移動する・旅行が出来る」ことの大切さを身に染みて感じました。また、円安も手伝って日本には世界中から観光客が訪れていますが沖縄も観光客の増加が著しいです。県内ではホテルの新規開業が相次いでいますが、既存のホテルの運営状況はコロナ禍前を回復するには至っていないところもあります。」

観光客にとっては、たくさんホテルがあったほうが便利なように思いますが、そうでもないわけですね。

第7回 早わかりビズ「ホテル施設調査からみた持続可能な観光へ向けた取り組み」ビジネスキャッチー

宮国英理子研究員「そうなんです。このまま多数のホテルの建設が進み建物が乱立することで想定される悪いシナリオがこちらです。1自然環境や景観が損なわれる可能性 2宿泊施設の需給バランスが崩れる 3稼働率の低下や宿泊料金の下落など過当競争を引き起こし 4結果的に県経済に悪影響が及ぶこうならないために、まずは現状の調査から始めました。」

なるほど、ホテルの現状を調査することで持続可能な観光地とはどういうものかがわかってきたという事ですね。

宮国英理子研究員「はい。2023年9月から去年3月にかけて調査し県内のホテル763施設のデータベースを構築しました。また、県内の宿泊可能人数と入域客数から、需給状況を考えてみました。そこから見えてきた事がこちらです。」

ホテルの供給が需要を大きく上回っているという事です。詳しく見ていきますと、2022年末時点でのホテル・旅館の収容人数は13万6000人ですが、年間平均で見た一日当たりの宿泊需要は2024年で7万2000人、6年後の2031年でも8万9000人に留まる見込みです。

一日に13万6000人分泊まれるけれど、実際はその半分くらいしか客室は埋まっていないという状況なんですね。

宮国英理子研究員「はい、季節性をみても観光のトップシーズンである夏休み時期についても、需要より供給が多い状態です。閑散期だとさらに空き室が多くなってきます。もちろん計算は理論上のもので、実際は地域の偏りやホテルのクラスなど考慮することがありますが、それでも立地状況について業界全体で考えていかなければならない状態だといえます。」

そうなると、ホテルが増えることで、先ほど指摘のあった宿泊料金の値下げ合戦が起き、ホテル従業員の離職やサービスの低下があり、その結果観光客の満足度が下がるという事になりますね。

第7回 早わかりビズ「ホテル施設調査からみた持続可能な観光へ向けた取り組み」ビジネスキャッチー

宮国英理子研究員「はい、『経営課題』についてこちらのグラフをご覧ください。アンケートでは、『稼働率の向上』が最も多く、ついで『販売価格競争』、『人手不足』と続いています。人手不足のなか、働き手の取り合いも想定されます。」

この経営課題をみると、ひょっとしたらすでに悪いシナリオに入り始めているのでは?という感じもしてきますね。

宮国英理子研究員「そうですね、それから、行政への要望を多い順にまとめました。経営課題に直結する『過当競争対策』を挙げた企業が28.7パーセント『外国人採用支援』についても13.8パーセントありました。また『観光資源の保護』や『オーバーツーリズム対策』など沖縄県の観光全体の課題となっている点についても回答が多くありました。観光客の増加による交通渋滞や水問題など、生活インフラにも影響がでてくるということも課題になります。」

なるほど。観光業界の課題解決にあたっては、やはり行政に求められる役割は大きいのですね。

宮国英理子研究員「はい、宿泊業界が抱える課題を今回は5つにまとめました。1『稼働率の向上や販売価格競争』2『人材関連』ついてはすでに紹介してきましたが、3『施設・設備関連』は老朽化している施設や設備がある事も課題で、高付加価値化への支援が望まれています。また・・・4『交通関連』については、交通渋滞や運転手不足の課題もありますが、アンケートからは、個人タクシーの運転手の高齢化や恒常的なタクシー不足、それに伴うバスやタクシー会社への支援も望まれています。最後に5『魅力的な街・観光地の形成』については、具体的には観光客がキャリーバッグを持ち運びしやすい街づくりや、車いすでの利用可能な飲食店の整備、などがありました。また、県民も足を運びたくなるような街づくりなどが挙げられました。」

いろいろな課題がありますね。最後に、今後必要な取り組みへの提言をお願いします。

宮国英理子研究員「2つ挙げたいと思います。一つ目は行政・観光事業者など関係者の協議と連携の場を設けて、定期的に開催する事です。協議の場では、行政と事業者がホテルの設置について検討したり、観光の課題認識を共有したりしていくことが求められます。」

そのことにより、「量」から「質」への転換を進める観光について、軸を一つに取り組むことができますね!そして二つ目は?

宮国英理子研究員「二つ目は効率的なデータ管理と情報共有の仕組みの構築です。県内の観光に関する様々な課題を可視化してデータに基づいたより戦略的な観光振興策の実現に繋がります。」

第7回 早わかりビズ「ホテル施設調査からみた持続可能な観光へ向けた取り組み」ビジネスキャッチー

これまで見てきたように県内の宿泊施設の現状は決して楽観視できるものではありません。行政と事業者、地域住民など全体が共通認識を持ち議論していくことで沖縄が目指す「世界から選ばれる持続可能な観光地」の実現に繋がると考えています。

きょうはりゅうぎん総合研究所の宮国さんにわかりやすく解説していただきました。ありがとうございました。ここまで「早わかりビズ」ビジネスキャッチーでした。