特集です。去年4月、県内で初めて通知表を廃止するということで注目を集めた小学校があります。児童自らの学習する力を伸ばす狙いがあるということですが、子どもたちへ、そして教師へ、どのような変化をもたらしているのでしょうか?取材しました。
うるま市の赤道小学校。2学期の終業式を前に行われた学活の授業で手渡されたのは、「個票」というものでした。
先生「個票をくばってから学習計画を立てるということをしていきたいと思います。」
「個票」とは、テスト結果を元に、各項目ごとに習熟度を反映したものです。
先生「自分の点数が高いものは何で丸をつけるんだった?赤ペンで丸をつけてください。苦手なものは、蛍光ペンで印をいれてください。」
個票を手渡された子どもたちは、早速苦手な教科と得意な教科をチェックしながら学習項目を分析し目標を設定していきます。
「全部国語だけでいいですか?」先生「それはあなたの得意な科目と苦手な科目によると思います。」
先生とこどもとのやりとり「この中で、得意じゃないないものを終わらせて得意なものの中で一番得意じゃないものをやっていいの?」先生「もちろんもちろんそれは全然いいよ」
目標設定は、子ども自身に委ねられ自分と向き合う時間に重きをおいています。それぞれ立てた目標は?
生徒「私は、冬休みの間で漢字をたくさん練習して次のテストで100点取りたいです。」
生徒「私は、冬休みの間に算数を完璧にしたいです。学習の計画通りに進めるために毎日計画表をみます。」
なぜ、なじみのある通知表を廃止し、今回から県内で初めて個票を導入することになったのか?校長先生に聞きました。
赤道小学校 城間修司校長「本校の実際の目的は、子どもたちが一人一人に自己評価の力をつけたい。そういった願いから通知表より個票がよいと判断し、個票による評価をすることにしました」
実は、通知表を出すか出さないかは校長の判断で決めることができるのです。現場の教師は当初、校長先生から通知表を廃止すると聞いた時戸惑いがあったと話します。
2年3組 担任 照屋奈々子先生「えっ?どうなるの通知表がないとなると子どもたちにどうやってやってきたことを振り返るのか?保護者にどう伝えていくのか?少し心配はありました。」
しかし、導入して9か月。児童に行ったアンケート調査では意外な結果が現れていました。
個票で学んだことを振り返り、自学自習を行って良かったですか?という質問では、94%が良かったと答え、さらに、今後も必要なことだと思いますか?という問いにも97%のこれからも大切で必要と答えていました。
自分の頑張ったところと課題がわかり、周りを気にせず自分のペースで学習ができる点も個票の評価につなっがったようです。
三宅潤明さん「個票になる前は、生活態度の表示があったので、今なくなったそれはちょっと心配ですが、よいこのあゆみのままだったら何が出来て何が出来てないかで、そこが分かりづらかったので変わってよかったなって思います。」
さらに、教員の働き方にも変化をもたらしています。
下里明子先生(教師歴10年目)「(通知表作成で)休日とか何時間とかは自宅でやったりとかもあったので」「小さい子を育てているので土日は仕事をしなくても平日で仕事を終わらせるということができてとても助かっています」
通知表の廃止だけでなく働き方改革の一環として業務の見える化と優先順位を決めタスクマネジメントを心がけたことで教員の業務改善にもなっています。
超勤45時間以上80時間未満の勤務者数を2023年度と2024年度で比較すると徐々に減ってきているのがわかります。
安里光正先生 教師歴18年目「働き方で言えば集中型だったのが分散型になったかなって感じですね。仕事量がすごく減ったわけではないと思いますけど、日常に分散されたかなって、親とのコミュニケーションも増えた気がします。」
子どもたちの学習能力を引き延ばすために導入された個票が、教員の業務負担の軽減につながり教育現場での改革がおきています。そして、子どもたちの心にも学びへの希望が芽生えつつあります。
照屋玲衣さん「2学期は算数だったんだけど3学期は全教科頑張ってやっていこうかとおもいます。」
原科娃花さん「遊びと勉強を両立しながら3学期に向けて勉強をいっぱい頑張りたい」
金井こはなさん「3学期の目標は、漢字と算数計算を全部完璧にしたいです。」
子どもたちも教師も自分と向き合う時間が確保され自己肯定感があがっているようですね。