今年に入ってから、県内でダイビング中の死亡事故が急増しています。そんな中、県は初めて本格的な県内のダイビング業者の実態調査を行いました。そこからは、深刻な業界の現状が見えてきました。
「ガイドが全く後ろを見ないで速く進み、置いてけぼりになるのではと、パニックの手前になった」県内でダイビングをした観光客の、衝撃的なコメントの数々。これは、今年、県がまとめたダイビング業界の実態把握調査の中で明らかになったもの。安全性を高め、需要を拡大し、県内のダイビング業を、産業として強化しようと実施されたもので県内全域にわたる、本格的な業界の実態把握調査は初めて。
アンケートは、県内の事業者、592ヶ所に配布され167件の回答を得ました。調査結果から見えてきたもの。経営では法人格を持たない、零細な個人経営がおよそ70%を占めていることが分かりました。また、AEDなど緊急時の装備品の設置率低いことも明らかになりました。
実は、今年、県内でのダイビング中の死亡事故が8件と例年に比べ、急増しています。8月には、南城市で、体験ダイビング中の女性が死亡する事故が発生。この事故では、7人のダイバーをたった1人のインストラクターが見ていたことが分かり業者が家宅捜索を受ける事態に発展しました。調査では、今回の事故の原因を裏付けるような結果も浮き彫りとなりました。
現在、県内には過去最多の、およそ600の事業者があるとみられています。業者が考える、業界の課題は、倫理の低下、そして、安売り。実際に調査を行った県ダイビング安全対策協議会の村田さん。
ダイビング安全対策協議会 村田会長「ダイビングサービスの数が増えてきた。当然経済原則で言えば、競争の原理が働きますので、一円でも他社より安い価格を設定したいということが出てまいりますが」「人件費がカットされる可能性が出てくるんですね。そうしますと、なかなか優秀な人材が育たない。」
県内には、多くの、安全な事業者が営業している一方、利用客のアンケートからは、深刻な体験談が上がってきました。
「ガイドがタンクの残圧を確認すると残圧が限界を切っていた」「サンゴ礁の上を泳いでいる時に、他のダイビング船が真上を通って行った」「ガイドが案内を誤りエアー切れで荒れた水面をボートまで泳いだ」
ダイビング中に、恐い体験をしたことがあるかとの質問では、あると答えたガイドは1%。一方利用者の22%は、ヒヤリとした経験があると答え大きな差が出ました。
ダイバー「インストラクターの方が気がついて対処してくれるまでに、結構自分の中ではもういっぱいの状態になっているんですよね。こうしてくださいっていう指示があってもそれに従えないんですよ。自分にスキルがないと」ダイバー「インストラクターの方1人に何人お客さんがついているかっていう、グループの人数が多すぎるとたぶんインストラクターの方も目が届かなくなっちゃうことがあるんじゃないかなと思うんですよ」ダイバー「当然助けてもらえるもんだと思っているんで、やっぱり依存する気持ちって言うのは、初心者の頃は高いですよね」
アンケートでは、経験が3年未満という経験が浅いインストラクターがおよそ3割を占めることも分かりました。また、インストラクターも低賃金、将来性が低い、そして、労働条件が過酷だと訴えています。
ダイビング安全対策協議会 村田会長「人の命を預かる職業なんで、その辺の倫理観っていうのが、やはり希薄になってきている可能性がある」
利用者は、県内の業界の現状を、こう指摘します。「この10年でガイドの質がかなり低下したように感じる」
ダイビング安全対策協議会 村田会長「やはりこういった形で、文字化をして情報として残しておく、それを次の世代にきちっと残しておく。同じ轍を踏まないような形」
健全な業者がいる一方で、業界全体の、安全性の底上げは今、緊急の課題となっています。
ダイビング安全対策協議会 村田会長「まず、アンケート結果を見ていただく、HP上でも公開していますので、それを見ていただく、それを自分の地域の場合にどういう風に反映できるのかということですね」
村田さんたちは、今回の調査を第一歩に、業界の健全化に向けて、取り組みを強化したいと話しています。ここ10年、ショップの数は増えてきたということですが、ダイビング客の数は横ばいが続いているということでそれも経営を圧迫しているようです。
県内の観光では、過度の安売り競争の弊害というのは時々指摘されますがダイビングはまさに命に関わるサービスですから、ここは、業界全体のルール作りのようなものが必要な時期に来ているのかもしれません。沖縄の水中の世界をより多くの人に楽しんでもらうためにもやっぱり安全に楽しんでもらいたいですね。