政府は、日本の安全保障や防衛力の基本方針を示す「防衛大綱」をあす17日に閣議決定します。しかし、そこで検討されている計画は、沖縄県民に新たな負担を強いるもののようです。
民主党政権になって初めて見直される「防衛大綱」。そのポイントの一つが「南西諸島の防衛態勢の強化」です。先月、沖縄を訪れた安住防衛副大臣は-。
安住防衛副大臣「これからの日本の防衛は北から南へスイングしていかなくてはならないと思っている。陸上自衛隊を(先島地域に)駐屯させるということが県民の皆さんにも受け入れていただけるのであれば」
新しい計画では、与那国島などへ陸上自衛隊を配備することが盛り込まれる見通しです。そんな中で起きた2つの事件。
尖閣諸島での漁船衝突事故を機に浮き彫りになった「中国」との対立。そして緊張する朝鮮半島情勢。それらが政府の計画を後押しするという危うい事態になっています。
過去最大規模となった日米共同統合演習。韓国軍が初めてオブザーバーとして参加したほか、パトリオットミサイルも訓練に加わりました。
中でも象徴的だったのがアメリカ軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」。敵が離島に攻め込んだという想定で訓練を実施。その様子を公開して「脅威」と目される周辺諸国に無言の圧力をかけたのです。
こうした中、アメリカ軍の制服組トップは日本と韓国に連携を呼び掛けます。
アメリカ軍・マレン統合参謀本部議長「これまで行わなかったような形で多国間で軍事的に協力していく必要がある」
広大なアメリカ軍基地。さらに自衛隊の強化が急激に進められようとしている沖縄。軍事ジャーナリストの田岡俊次さんは中国や朝鮮半島の脅威論は見せかけでこうした流れの背景には、冷戦構造が崩れ、行き場を失った自衛隊の存在があるのだと指摘します。
田岡俊次さん「ソ連が崩壊し、北海道に攻めてくる可能性はなくなった。北海道に代わって南西諸島に中国の脅威があるということにして、そこに移すかということで存在価値を確保したいと。単に相手を刺激する、私は戦略的には愚策だと思っています」
「防衛大綱」はあす閣議決定されます。
県民が知らないところで自衛隊の新たな配備、増員計画が着々と進められているようです。確かに、近隣諸国の不安定な要素は気になるものですが、それに引っ張られてしまっては危険、冷静に事実を見極めることが必要ではないでしょうか。